オール・アバウト・セックス :鹿島茂

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この本は、日本のエロについて書かれた本である。百冊以上のエロについて書かれた本につ
いて書評しながら、日本人のセックスの実情を論じている。特に女性の性欲について、赤裸
々に論じているところが興味深い。
「官能小説ガイド」のタイトルでその手の本のリストが盛り込まれており、その手の本に興
味のある人には、見逃せない一冊である。
なお、念のために、この本の著者は東京大学大学院卒で、某女子大の教授をされているりっ
ぱな学者であることをつけ加えておく。

まずは、女の性欲について
・男による女の支配は、男が女の性欲を恐れてこれを様々な形で抑圧したところから生まれ
 る。したがって、こうした支配形態社会を打破するには、女の性欲を男の性欲と等価に置
 く性革命を成し遂げ、性の協調形態社会を実現しなければならない。
・性革命後の社会では、少女から女に変身するのは、かえって難しい。なぜなら、処女を早
 めに捨てなければカマトト扱いにされるし、かといって社会の開放度を信じて性体験を積
 めば、「誰とでも寝るあばずれ」と後ろ指さされるからだ。
・処女喪失のあっけなさは、少女から女への通過儀礼が廃絶されたにもかかわらず、それに
 代わるべきものがいまだに用意されていないことからくる。性革命後の社会では、少女
 が女になる決定が少女自身に任されているのに、そのための手助けをしてくれるものがな
 い。性欲を肯定し、それへの準備をする教育はなされていない。
・たぶん女性たちは本当に、強い性欲を持った神秘的な存在である。過去に見られるように、
 女性の欲望を抑えつけないこと。今日よく耳にするように、女性を嘲笑して、その欲望を
 ジュークのネタにしておとしめないこと。そのかわりに、女性の性欲を私たちの文明の中
 に組入れること。女性の欲望の本質を正直に認めないと、社会の破壊を招くだろう。

堅忍不抜のエロ事師、官憲と闘う
・男のスケベと女のオシャレはどんな強圧的な体制でも弾圧できないということである。と
 りわけ、男のスケバは、たとえ死罪をもって抑圧しようとしても、必ずや法網をかいくぐ
 って活路を見出そうとする。

繁殖から遠く離れて
・現代における最大の問題はこうした繁殖への遺伝子プログラムが変化しないにもかかわら
 ず、社会の変化で、女性が出産の義務なしの性的自由と労働の権利を得たことである。な
 ぜなら女性がいくらセックスと妊娠は別と頭では考えても、繁殖への遺伝子プログラムは
 生きているため、心の中では、「母親の衝動が今なお根強く生きている」。ところが、
 「たいていの仕事は、たった一人の子どもを産むこととすら両立しない」。生殖とセック
 スが切り離された影響はこれからますます大きくなるだろう。

fの探究
・異性愛の男女が好む性行為の統計を取り、それを1位から10位まで男女別に並べてみた。
 その結果はというと、男の側では、「フェラチオでオルガスムに達する」というのが堂々
 の第1位、「規則的に間をおいて体位を変えながら性交する」が第2位、「女性と肛門性
 交する」が第5位、「基本的なクンニリングスをする」は第9位、第10位は「マスタベ
 ーションをする」である。
・これに対し、女性のほうはというと、「クリトリスに軽いクンニリングスを受ける」が大
 1位、「指でクリトリスに軽いマッサージを受ける」が第2位、「男性の上に馬乗りにな
 って行為をする」が第3位であるのに対し、「基本的にフェラチオをする」はドンケツの
 第10位である。
・ご承知のように、多くの女性はフェラチオをほとんど(というよりまったく)好まない。
 しかし、いったい何人の男性が認めるだろうか。フェラチオが男性にとって快楽の真髄
 となるのは、おそらく、自分に力があると仮定して、その力のシンボルを完全に称える
 行為となっているときであることを。

不倫妻はサイバー空間もお手のもの
・携帯がテレクラとレディース・コミックと結びつくことで、女はどんなところにいても自
 己の欲望を男のそれと直結できることになった。これまでは浮気願望を抱えていても、い
 きなり男に話しかけることもできず、願望を潜在的なものに止めておくほかなかった女た
 ちが、自分だけが自由に使える通信手段を持つことで、いとも簡単に障害を克服したので
 ある。

売春しない理由
・この人ならまあ寝てもいいかな、という相手を選び、相手がそのお礼にお金をくれるとい
 うなら、どうしてそれを拒否する理由があろう。
・では、それにもかかわらず、なぜ売春をしないのか?ひとつには売春は長期的にみれば経
 済的に割があわないからだ。しかし、売春が割りに合わない最大の理由は、「売春が、特
 に女性にとって、その尊厳を売り渡す行為だと社会的に解釈されている」ことである。つ
 まり、いったん「あいつは売春婦だ」というレッテルを張られたら社会から尊重されなく
 なるということ。要するに、売春は社会的にリスキーすぎるのである。これが、大部分の
 女性が売春しない身も蓋もない理由なのだ。

サルだって「ホカホカ」くらいする
・一般に、サルはヒトと異なり生殖のためだめに交尾することが考えられているが、これは
 どうもちがうらしい。なぜなら類人猿のメスにもオルガスムが観察され、あきらかに快楽
 のためのセックスが行われているからである。

「短」か「長」か
・女性はヴァギナの内部でペニスが抽送されるだけではほとんど快楽は得られないという事
 実がある。すなわち、女性のオルガスム発生源はクリトリスを中心とした神経と外陰部で
 あり、そこを「オシオシ」「モミモミ」されることで初めてオルガスムに達することがで
 きるというのだ。
・つまり、女性はペニスの抽送で膣壁をこすられるよりも、ペニスを根元までしっかり膣に
 納めたまま、外陰部全体を男性の恥骨やペニスの根元に強く押しつけながら、こすりつけ
 るように腰を前後に揺すり動かすほうが感じやすいのです。
・肝心なのは、ペニスが「根元まで」入り、男女の恥骨同士がピッタリと圧着していること
 なので、ペニスが長い必要はまったくない。それどころか、膣に入りきらずに根元の部分
 が余ってしまうような巨根では、恥骨の触れ合いがないから、女性の快感は永遠にやって
 こないのだ。
・正常位で女性が喜ぶやり方は、女性の開脚位でなく、ペニスを受け入れた後、両脚を閉じ
 て伸ばし、陰阜を突き上げるようにする姿勢です。男は女性の両脚を挟んで、恥骨とペニ
 スの根元で陰阜をこすり上げるようにして腰を使います。

女は「する」けれど男は「見る」だけ
・昔とちがって、女性たちがセックスで快楽を、とりわけオルガスムを得るのが当然という
 前提がある今日において、夫たる男たちには、かならずしもそれを妻に与える能力がない
 というのが現実だからである。女性たちのセックスの快楽に対する欲求と、オルガスムへ
 のイメージだけが先行し、男たちの能力がそれについて行けなくなっているのが今日の日
 本のセックスの状況なのである。