ラブホテル進化論   :金益美

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この本の著者は、現役の女子大生ということで、とても興味を覚えて読んでみた。
内容は、ラブホテルとはどういうホテルかの解説からはじまり、ラブホテルの派手な外観や
ネーミングの由来、ラブホテルの必須アイテムとはどんなものがあるか、ラブホテルの誕生
の社会背景などなど。
それから、ラブホテルの利用者の実態なども盛り込まれており、なかなか充実した内容とな
っている。特に注目したのは、ラブホテルの利用者には高齢者がけっこうな数いるというこ
とである。これは、ラブホテルの利用者は若いカップルだけかと思っていた私には、目から
鱗であった。
そして、筆者は、これからの高齢化社会においては、高齢者の利用を前提としたラブホテル
にしていくべきと説いている。若い女子大生でありながら、なかなか鋭い視点である。

はじめに
・日本には、ラブホテルと呼ばれる摩訶不思議な建物がある。ラブホテルとは、宿泊もでき
 る貸間産業の一つであり、おもにカップルが利用するための密室空間を提供している施設
 である。
・その時代その時代に合わせて多様に変化を遂げてきたラブホテルは、日本人の性に、日本
 の住宅事情にぴったりとはまり、目まぐるしく進化を遂げた。
・ラブホテルは、決して日陰の存在ではなく、堂々たる日本の文化である。

あこがれのラブホテル
・人々のあこがれが集まる場所、それがラブホテルである。
・ラブホテルは、その時代その時代の最新設備をいち早く取り入れてきた。
・現在のラブホテルにとって欠かせないものは、その時話題になっているものや、最新型の
 設備なのである。
・ここで注目したいのは、いわゆるセックスをするために用意された空間が、宣伝効果をあ
 げるために設備を充実させたことで、多目的空間に変化していったということである。時
 代のニーズあわせて新しい設備やグッズをどんどん投入することで、ラブホテルそのもの
 が、その時代の人々のあこがれが集まる空間として確立していったことである。
・現在のラブホテルは、セックスをするためだめに用意された空間ではない。セックスをす
 るだけなら、部屋に布団があれば充分だ。
・ラブホテルの歴史というのは、装置産業、設備産業としての進化の歴史でもあります。家
 庭用として普及する前に、高価だけれどもみんなが持ってみたいというものが、まずラブ
 ホテルに導入されたという経緯があるんです。
・ラブホテルに老舗は存在しない。海外のホテルは、老舗というアンティークな古い家具が
 味を出していて、歴史あるホテルという認識があるが、ラブホテルの老舗=ただの古いホ
 テルということになる。ラブホテルは、常に目新しいものを追い求める流行産業なのだ。
・ここにあるキーワードは”ホテル”でしか経験できない非日常である。ラブホテルには、
 古城のような外観や、回転ベットに代表されるような、夢のような非日常空間が追及され
 た時代があった。しかし現在のラブホテルは、夢のような非日常空間から、カップルが二
 人っきりでくつろげる癒しの非日常空間へと変化している。

ラブホテルシグナル
・ラブホテルとシティホテルの違いは、どこにあるのだろうか。まず、シティホテルは宿泊
 だけでなく、宴会からブライダル、ショッピング、飲食など多目的な複合施設である。そ
 れに比べラブホテルは、カップルを対象とした部屋貸しをメインとする休息、宿泊施設で
 ある。
・ここ数年でシティホテルとラブホテルのボーダーレス化が進んでいるというのも事実であ
 る。それは、シティホテルがデイユースと称した時間貸しのシステムを取り入れたことが
 大きい。デイユースとは、いわゆるラブホテルの休息と同じく、宿泊とは別に、部屋を短
 時間利用できるというシステムである。
・なぜ、そんなにインパクトを与えるような外観のラブホテルが多く存在するのか。それは、
 ラブホテルの外観そのものが広告塔の役割を担っているからである。ラブホテルの最初の
 シグナルは、存在を主張する外観である。
・今でこそ、情報誌などで年に何度もラブホテル特集が組まれたり、インターネット上にホ
 テルの情報サイトがあったりと、情報を出すにも得るにも便利な時代になったが、宣伝が
 できないというのは、ラブホテルにとって大きな問題であった。
・シティホテルと違って、ラブホテルは予約制を取り入れているところが少ない。利用者に
 認識としては予約せずに利用するのがまだまだ一般的である。そのため、多くのラブホテ
 ルには、部屋の空き状態を示す「空」「満」の表示がついており、カップルはそれで空き
 状態を確認してから入るというわけである。
・しかし、最近、「空」「満」表示をつけない都市型のホテルが増えてきた。原因は、利用
 者の意識の変化である。現在は、ラブホテルにどこでもいいからさあ入ろう!ではなく、
 あのホテルに行きたい!と、利用者が取捨選択するようになってきたのである。
・お客さんが一人で入ってきているのかなと思う時もあるんですけど、よく見たらシートを
 思い切り倒してたりね。また、後に乗っているとか、必要以上に女性が顔を隠しているの
 をよく見かけますね。なんかの逢瀬じゃないけど、絶対にばれたらいけないようなお客さ
 んが多いですね。

ラブホテル必須アイテム
・現在のラブホテルアイテムは、おとなのおもちゃが買えるコンビニボックスや、風呂に置
 いてあるマットやローション、最近増えてきたコスプレ貸出しなど様々である。
・現在のラブホテルはセックスをする場所というよりも、セックスもできる場所という色が
 強い。したがって、ラブアイテムもそういう位置づけで設置されているである。
・つまり、回転別途が回る度、様々な角度から別途が映し出される。色んな角度から自分た
 ちの性交の姿を見ることで、より興奮が高まるということである。
・連れ込み旅館と呼ばれていた多くの旅館は、セックスのための鏡があった。
・兄弟とかとはまた違う、セックスを盛り上げるための装置としての役割だ。
・日本文化は、慮入りなどを見ても視覚的の要素が高く、鏡を見ることで興奮するというの
 は、日本人の感覚に非常にマッチするのかもしれない。
・ラブホテルは女性の目を意識するようになった。男性に連れ込まれていたはずの女性が、
 男性と一緒にラブホテルを楽しむようになり、ラブホテルに対しても意見するようになっ
 た。

ラブホテルを経営する
・東京で有名なラブホテル街である渋谷・円山町は、戦前は花街として知られていたが、今
 や歌舞伎町や上野を超える数のラブホテルが軒を連ねる。きっかけは岐阜県の白川村がダ
 ム建設で水没したことも大きいという。職をなくした白川村の人びとが上京し、渋谷で四
 畳半の旅館を営むことになったのが現在のホテル街の前身であり、円山町に川の付く名前
 のホテルがあるのは、その名残であるという。

ラブホテルを利用する
・ラブホテルは、基本的に男女のカップルの利用を対象にしている。しかし現在は、その関
 係性も利用方法も多種多様に富み、とてもひとくくりにはできない。若者が行列を作るラ
 ブホテルから、高齢者利用が80パーセントを占めるラブホテルまで、客層でホテルのサ
 ービスも提供するものも変ってくる。
・例えば、不倫カップルや高齢者カップルがラブホテルを選ぶときには、従業員と顔を合わ
 せないということを第一に考える。外観がおしゃれで、料金は高めのホテルは不倫客が多
 く、それとは反対に、古くて安いワンルーム・ワンガレージ式のホテルは高齢者の利用が
 多い。ちなみに年金支給日の翌日は、そういったホテルには高齢者が溢れかえるという。
・ラブホテルへ来るアベックは、一番多くのが恋人同士。二番目がプロの女性と客、三番目
 が夫婦なんです。夫婦って以外に多いんですよ。住宅事情のせいで家では存分に楽しめな
 いってこともありますからね。
・ラブホテルを利用する夫婦は、中高年が多いというのがわかった。それはつまり、生殖を
 目的としなくなった中年以後の夫婦の求めるものに、現在のラブホテルがうまくフィット
 しているということである。
・近ごろでは、情報に通じた多くの若い欧米人観光客が、日本に着くとまっすぐに最寄りの
 ラブホテルをめざす。最近の案内書の一つにこんな助言が載っていた。「ラブホテルは日
 本固有のものである。情事をおこなうために、1時間あるいは1晩いくらで部屋を借りら
 れる。壁が薄く、プライバシーの限定された国にあっては、不倫カップルばかりでなく、
 結婚しているカップルにもありがたい施設となっている。必ずしもいかがわしい場所では
 ない」

ラブホテルの未来
・バブル崩壊後から、ラブホテルは緩やかに衰退を続けている。原因はいくつかあるが、中
 でも大きいのは、ラブホテルの大きな特権であった”二人きりになれる空間”他にも登場
 してきたということだ。例えば、ワンボックスカーやカラオケルーム、漫画喫茶、貸切温
 泉、飲食店の個室のブームなど、ラブホテル以外の個室空間が急速に充実しはじめた。
・ラブホテルというのは、非日常的な空間であり、異次元の世界であるのと同時に最終的に
 はエロスの館だということを忘れてはならないのです。今あるのはただのきれいなだけの
 何の変哲もない泊まるだけの箱で、そこに彼おけがついているかゲーム機があるだけの違
 いで、ラブホテルとは縁遠いものが大半です。今すぐにでも発想の転換を図らない限り、
 この先4,5年で半減するものと思われます。
・バブル時代、豪華で贅沢さだけが目立つ、ラブホテル本来の夢のある非日常的空間、異次
 元の世界とは程遠いものとなり下がり、バブル崩壊とともにラブホテル離れが始まり、ト
 ン等の意味のラブホテルがなくなりました。
・今の世の中、高齢化社会突入で人生百歳も夢じゃない時代、元気な高齢者が多く、定年後
 60歳からセックスをエンジョイするためのエルだーホテルがあってもいいのではないか
 と考える。
・高齢者ばかりが利用するラブホテルがある。最新設備などはなくても、人に見られない造
 りの昔ながらのホテルで、ワンルーム・ワンガレージ式の構造のホテルに高齢者の利用が
 集中している。平日の昼間だと利用客の5〜6割が高齢者だという。
・見た目70歳くらい同士のカップルが多く、掃除に入ると、コンドームもテッシュもお風
 呂も使った形跡がないことがほとんどだという。つまり、セックスはしていないのではな
 いかということだ。ただベットを使った形跡とお茶を飲んだ形跡があるという。
・セックスをするためだけの空間というより、これからは癒しの空間であったり、添い寝が
 できる空間にもなってくると思う。というのも、お爺ちゃん、お婆ちゃんの原宿と呼ば
 れている巣鴨近辺のホテルなんかは、高齢者の利用がすごく多いんです。で、セックスを
 した形跡がなくても、部屋でふたりで2,3時間いた形跡があるんです。
・取り締まりや規制をしても、必ず抜け道をつくり、人びとは性を追い求め続ける。何かを
 無理やり規制しようとすると、どこかに穴が開き、ますます暗いところで同じことが繰り
 返されることになるということを、私たちはもうそろそろ学ばなければならない。