十年不倫  :衿野未矢

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「不倫」が社会現象になって久しいが、その不倫も今ではすっかり社会の中に定着してし
まっているようだ。もっとも、その不倫も普通は数年で終わりとなるケースが大半のよう
ではあるが、なかには10年以上という長期間にわたって不倫を続けている不倫カップル
もあるという。10年以上というと、それはもはや、一時的な特殊な状態ではなく、不倫
自体が日常生活になっているといっていいだろう。
不倫と言うと、そのきっかけとなるのは、退屈な日常生活に刺激を求めた結果というのが、
一般的ではと思っていたが、それほど単純なものでもないようだ。特に、10年以上もの
長期間にわたって不倫を続けている人たちの多くは、子ども時代の家庭環境からの影響が
影を落としていることも多いようだ。だから、普通ならば数年で不倫という刺激的な関係
も慢性化してきて、刺激的ではなくなるとともに終わりを迎えるはずのものが、何年経っ
てもそこから抜けられない、抜け出せないということになってしまっているようだ。
不倫の結末が、どんなふうになろうとも、当事者である二人だけの「自己責任」あるいは
「自業自得」というだけならば、赤の他人がとやかく言うこともないかもしれないが、
その不倫が、当事者の家庭の子どもに大きな影響を及ぼすということになれば、やはり他
人事ということで、すませるわけにはいかないであろう。
未婚率が上昇を続ける社会においては、不倫も増加を続けることは致し方ないことなのか
もしれないが、せめて、不倫という深みにはまる前に、一時的な浮気にとどめておくべき
であろう。

不倫アンケート
・ここ数年、私は「依存症」に関する本を続けて書いてきた。その取材で出会った女性が、
 実は不倫をしているというケースに数多くぶつかった。お酒やギャンブルのかわりに不
 倫に依存するという、「不倫依存症」のような女性や男性にも話を聞いた。夫の浮気や
 不倫に悩む妻にも多く出会った。
・不倫をテーマにしたるポタージュや不倫のハウツー本、不倫の恋を美しくいたいあげた
 小説が版を重ねているのを見ても、不倫はすでにごく身近な恋愛関係のバリエーション
 の一つになっていることが伝わってくる。不倫に関する公的な統計などは存在しないが、
 「増えている」ということは、多くの人が漫然と感じているのではないだろうか。
・ところで私自身も、不倫の経験がある。二十代なかばで、十歳ほど上の既婚男性とつき
 あっていたのだ。定期的に月に二度ほど、ある場で顔を合わせる機会があった相手であ
 る。当時の私は編集者の仕事の夢中で、結婚願望はほとんどなかった。彼はそこそこの
 収入を得ていたから、気軽にごちそうしてもらえる。高級店やタクシーを気軽に使うデ
 ートを楽しんでみたり、その一方で会うことのできない週末の寂しさをおぼえたりと、
 まさに不倫の王道をたどっていた。十歳の年齢差も大きかった。彼は「自分は若い女性
 とつきあっている」という高揚感や優越感を失いたくないいから、つねに私を気づかい、
 譲歩した。
・別れのきっかけになったのは、彼から九州旅行に誘われたことだった。私はかなり行く
 気になっていたのだが、相談相手になってもらっていた年長の女性にその話をすると、
 即座に反対された。「やめなさい。旅行なんてしたら、彼と別れられなくなってしまう
 わよ」不倫について取材を進めるうちに、このアドバイスが的確だったことを私は痛感
 した。「一緒に旅行をする/しない」は、不倫が長期間にわたるか、それとも短期間で
 終わるかの分水嶺の一つなのだ。彼女に制止されたことで、私は見ないようにしていた
 事実を目の前に突きつけられたような気がした。
・彼は、妻や子どもたちに嘘をついて、私と一緒に時間を過ごしているのだ。私と「次は
 フグを食べに行こうね」と約束して帰った直後に、妻子に「ただいま」と笑顔を向けて
 いるのだ。 
・私は現在シングルで、仕事を持ち、自分名義のマンションに住み、結婚願望はないが、
 一人ぼっちで生きるのは寂しいと思っている。既婚男性でも恋愛の対象にできることを
 知っている。十年不倫の当事者となる条件が私にはすべてそろっているのだ。
・ここで「不倫」という言葉の定義づけをしておこう。まず「浮気と不倫のちがい」だが、
 私は恋愛感情の有無と、継続の意志の有無を基準にしている。はっきりとした線引きは
 不可能だが、不倫とは「一夜のあやまち」や「その場限りのお楽しみ」「性欲の充足だ
 け」ではなく、精神的なつながりがあり、それを持続する意志を共有している関係だと
 定義しておこう。 
・「既婚男性とシングル女性」の組み合わせに焦点をしぼった。既婚男性との交際期間を
 聞いてみたところ、8年未満が65%を占めるものの、「10年以上」と答えた人が、
 22.3%もいたのである。相手と出会った場所は、「職場」が58.3%と圧倒的に
 多い。次いで「趣味の場」が16.5%、「飲食サービス関連施設」が13.6%と続
 く。職場の出会いは、特に約束をしなくても定期的に顔を合わせる機会があり、理解や
 共感が生まれやすく、共通の話題にも事欠かない。また、一緒にいるのを人に見られて
 も不自然ではない。それだけに、いざ関係が生じると解消しづらく、ずるずると続くこ
 とにもなりそうだ。
・年齢は男性のほうが5〜9歳年上というのが19.4%、10〜14歳年上が18.4%
 15歳以上の年上も17.5%いる。同じ年は4.9%、男性が1〜4歳年下は2%の
 みだが、男性が10歳以上も年下だというのは、9.7%を占める。シングル同士の恋
 愛や結婚ならばためらうような年齢差でも、不倫ならばOKということを示すのではな
 いだろうか。  
・週に会う頻度からも興味深い傾向が読み取れる。週に3,4回から5以上が38.9%
 もいるが、週に1回は14.6%週に2回は8.7%だけだ。そして週に1回未満が、
 36.9%とはねあがる。週に2度も3度も会うような、まるで「第二の奥さん」のよ
 うな生活の一部になっているケースと、めっきり会わず、深く静かに進行しているケー
 スとに、大きく分かれているのだ。 
・「相手の妻は知っていますか?」の問いに、「はい」と答えたのが25.2%、「いい
 え」は37.9%である。注目すべきは「わからない」が36.9%もいることだ。考
 えたくない、考えないようにしているといった、複雑な心理が推測できる。
・なぜ、長く続けることができたのか、秘訣はなにかの問いに、次のような答えが寄せら
 れた。
 ・経済力
 ・多くは望まず、わがままを言わないから
 ・休日に会いたがらない、決して外泊しない
 ・誰にも話をしなかったから
 ・自分が未婚だったので、相手に合わせることができたから
 ・ベタベタした付き合いではなく、恋愛というよりも、もう兄弟のような関係になって
  いるので、あとは割り切ることぐらい?
 ・相手への愛情と、いろいろなことを我慢しているから
 男性家庭の領域に入り込まず、束縛もせず、熱く燃えすぎない。男性にとって「都合の
 いい女」だったのではと考えたくなる回答が多数派だ。   
・つらかったこと、イヤな思い出はの問いへの回答には、次のような答えが返ってきた。
 ・自分が若いときには、相手に結婚を求めてしまい、非常につらかった
 ・奥さんが怒鳴り込んできたこと。土下座してあやまったこと
 ・相手を百パーセントを信じることができないのが、とても辛かった
 ・相手が子ども、奥さんと愉しく話をしながら歩いているところに出くわして知らん顔
  をして通り過ぎなければならなかったこと。あと「妊娠した」と伝えたら即答で「お
  ろしてください」と言われたこと 
 ・関係が冷めても、職場で一緒に仕事をしなければならない
 つまり、「不倫を長く続ける否決」と、「つらかったこと、イヤな思い出」には相関関
 係がある。二つの問いへの答えを総合してみると、女性の側は「我慢」を強いられたり、
 不愉快な目にあわされたりすることが多く、長く続けられるか否かは、それらをうまく
 クリアできるかどうかにかかっている。
・さらに「恋愛関係を清算するきっかけとなった出来事」も、この延長線上にある。
 ・とくに出来事はなく、これ以上続けても「家庭」「結婚」はできないと判断した 
 ・奥さんと子どもにすごい眼でにらまれて、奥さんのお友だち何人かにも囲まれて皆に
  怒鳴られたから
 ・ほかの男性と結婚したこと
 ・新しい恋人ができた、ほかに好きな人ができたこと
 打算的というよりも、結婚や恋愛をきっかけにしなければ、不倫の清算に踏み切れなか
 ったのではないだろうか。  
・不倫して良かったと思えること、愉しかった思い出
 ・スリルがある
 ・世の中の弱者や差別されている人の気持ちに共感できるようになった
 ・何かをするように言われたので、資格をとったこと。一生一人かもしれないと思った
  ので、マンションを買ったこと
 ・相手の奥さんから電話がきたり、普通じゃあまり経験できない修羅場を経験できたの
  で、多少のことではうろたえなくなった
・二十代、三十代での不倫経験は、個人史の中で大きな位置を占め、それからの人生の方
 向性を決定づける。それでいて、現在は専業主婦となっている回答者の家族は、彼女の
 不倫経験を知らないだろう。約6割は職場で知り合っているが、二人の関係を知る上司
 や同僚はほとんどいないはずだ。 
・家族も友だちも同僚も知らないところで、生き方や価値観、恋愛観や結婚観、男性観の
 ベースに、不倫体験というDNAをもぐりこませている。そんな女性が、この社会には
 すでに数多く存在するのだ。 
・考えてみれば、現代社会を語るのに欠かせない「初婚年齢の上昇」「少子化」「離婚件
 数の増加」は、同時に不倫の起こりやすい社会」であることを示すキーワードでもある。  
 
十年不倫のかたち
<ケース1>
・証券会社に勤務する男性(54)、と化学メーカー勤務の女性(54)が出会ったのは
 テニスサークルの集まりだった。付き合って14年が経つ。二人は都内の有名私立大学
 の同級生だ。 
・女性は就職した化学メーカーでは、まず秘書課に配属されたが、異動願いを出し続けて
 営業部へいった。30代なかばで女性を総合職に登用する制度ができると、その第一号
 になった。現在の肩書は「部長代理」、女性としてはトップである。
・30歳になると親元から独立を志し、マンションを購入した。うまく買い換えたおかげ
 で、銀座からタクシーで千円とかからない、中央区の高層マンションに住んでいる。
 隅田川が一望できるテラスで。朝のコーヒーを飲むのが日課だという。
・恋人は、いたりいなかったりだったという。結婚しなかったのは、タイミングが合わな
 かったということだ。もっと言えば、総合職を目指した段階で、普通の女性のコースを
 外れたという意識があった。結婚、出産は自分とは違う人の生き方だと思っていた。
・彼女に不倫体験があることを知り、私は「なるほど」と思った。何度も不倫を繰り返す
 女性たちの話を聞くと、共通して出てくる言葉があるからだ。「いちど不倫を経験する
 と、既婚者が恋愛対象に入ってしまう」いいなと思う男性と知り合っても、彼が既婚だ
 とわかれば「なあんだ、ダメだ」と、釣りざおをひっこめるのが正常な感覚だ。しかし
 「既婚男性とも恋愛ができる」と知ってしまったら、既婚が釣りざおをひっこめる理由
 にはならなくなるのである。    
・月に2〜3回、テニスコートで会う。会社帰りに二人だけの場合もあれば、休日に所属
 サークルの試合や練習を口実に会うこともある。コートから女性のマンションに帰り、
 お風呂とセックス。それから着替えて都心に出て、遅い晩御飯を食べ、別れる。デパ地
 下のお惣菜を女性の部屋で食べ、テラスから夜景を楽しみながら食後酒を飲むこともあ
 る。 
・大学ではまだ学生運動があったけれど、そこでも闘うのは男、女はお結びの差し入れを
 する、みたいな構造があった。結婚と仕事の両立は無理だし、しようという意識もなか
 った。でも女として枯れたくはなかった。日常のつまらない話ができる、パートナーが
 欲しいという気持ちもある。彼は私にとって必要な、そしてぴったりの相手、だから続
 いたのでしょう。 
・私は男のパンツを洗うより、寂しさに耐えるほうがいい。女性は、男性中心だった職場
 で自分の意志でコースを選び、開拓してきたという誇りと自負を持っている。恋愛もそ
 うなと考えているようだ。 
 
<ケース2>
・大手服飾メーカー勤務の男性(56)と小さな広告会社勤務の女性(44)
・女性は男性の会社から、消費者調査や宣伝などの仕事を発注してもらっている。
・実は、二人が付き合っているのは、周囲では公然の秘密だ。彼女の勤務先、彼の部下た
 ち、仕事上のパートナーであるデザイン事務所の人々など、多くの人が知っている。こ
 の不倫のおかげで、彼女の会社は、着実に仕事を発注してもらっている。大手メーカー
 と契約しているということで、他社にも営業をかけやすい。金銭的な援助は受けていな
 いというが、周囲は「愛人」と見ている。 
・50代後半の男性にとって、30代半ばに見えるかわいらしい愛人がいるのは、楽しい
 ことにちがいない。それに男性はデート代は払っても、ホテル代の負担はない。外食し
 たあと、二人が向かうのは女性の住まいである。貯金と両親からの援助で買ったマンシ
 ョンだ。男性の自宅がある埼玉県戸田市から、川を渡って都内に入った板橋区にあり便
 利だ。男性用のバスローブとTシャツ、下着も置いてある。
・女性は、はっきり言って、結婚願望はない。というか、そこまでこだわっているわけで
 はなく、どっちでもよかった。チャンスがあれば結婚していたかもしれないけれど、チ
 ャンスは来なかった。女性には、ほかにボーイフレンドもいる。その男性とはしょっち
 ゅうメールをやりとりし、一緒に旅行することもあるそうだ。大学の同級生で既婚だ。
 彼女によれば「友だちと恋人の真ん中みたいな、楽しい関係」だという。
・男性には息子が二人いる。専業主婦の妻は、素直な性格で、夫の浮気は知らないらしい。
 男性は家族に秘密を持つぐらいは難なくできる人。女性のほかにも、ちょこちょこ、オ
 ンナはいるようだ。   
・女性が、男性に対して強気の理由は、デート代は、打ち合わせとして大半を男性が経費
 で落としていることだ。明るみに出たら問題になる行為だ。女性は、男性の弱みをにぎ
 っているのだ。
・女性は仕事やお金への貪欲さをむき出しにすることはないが、内に何かを秘めていそう
 だ。男性が女性との飲食代を会社に請求しているという証拠をひそかに押さえてあり、
 いざとなったら「会社や家庭にバラすわよ」と、開き直りそうな気がする。

・ケース1の50代女性を、私は「不倫第一世代」と考えている。職業的なイメージの強
 いおめかけさん、愛人といった存在ではなく、ひとつの恋愛の形として「不倫」を選ん
 だ女性たちが、一定の人数いる層として、最初に現れた世代である。女性が普通に仕事
 をする状況はまだ整ってはおらず、職業を持ち続けるにはさまざまな障害を乗り越えな
 くてはならなかった。しかし、働き盛りで男女雇用機会均等法の施行やバブル経済を体
 験し、追い風も吹いた。それでいて、彼女たちの結婚の対象となる団塊の世代や、学生
 運動を体験した世代の男性たちは、男女の役割分担に対しては保守的だ。
・結婚より仕事を選びたいが、恋愛はしたい。経済的な自立を背景に、彼とは対等な関係
 を保ちたい。そんな女性たちが「第一世代」だ。 
・現代の40代女性は「不倫第二世代」である。学生時代は「女子大生ブーム」だった。
 そしてバブルの高揚と同時に社会に出た彼女たちを待っていたのは、会社の接待交際費
 とタクシー券を手にした「オヤジ」たちだった。おしゃれやグルメに目覚めはじめた男
 性たちは、ブランド品で華やかに着飾ったシングル女性を連れて有名レストランに行く
 のを、「ステータス」と考えた。連れて行ってもらう女性の側も「私はワンクラス上の
 男性に選ばれた」と思い、嬉々としてついていった。不倫への敷居が一気に低くなった
 のは、この世代からである。   
・バブル経済とは、「お金の魅力」を増大させる装置だった。年齢が離れていても、既婚
 でも、お金があり、「深夜の六本木で、タクシーを確実に呼ぶことができる力」を持っ
 ていれば、魅力的な男性になれたのだ。
・不倫を「恋愛のひとつの形」として認めるようになったのは、私の世代が走りだろう。
 まだまだ後ろめたさはあり、人に話すには勇気が必要だったが、「既婚者を好きになっ
 てしまったんだから仕方がない」と、自分に言い訳ができた。つまり第二世代は「不倫
 だけど、まあいいか」の世代である。
・現在の30代女性はどうか。「不倫第三世代」の彼女たちを、私は「不倫だけど、それ
 が何か?」の世代だと考えている。   

<ケース3>
・都内の私立大学を出て自動車部品メーカーに就職したばかりの女性は、隣の部署の課長
 である当時33歳だった男性(44)に食事を誘われた。同期入社の男女も一緒だった
 から気軽に参加した。女性は地方出身で、大学時代からずっと一人暮らしである。生活
 はギリギリだから、おごってもらえるのが嬉しかったという。大手町にある会社から3
 駅5路線が使えるが、女性と男性は同じ路線を使っていたから、2ヶ月に一度ほどそう
 いう機会があった。
・関係が変化したのは、女性の転職がきっかけだ。女性社員の派閥抗争にうんざりして辞
 め、派遣社員になったのだ。もっとも派遣社員をはじめてみると、女性は後悔する。収
 入ダウンはやはり大きい。契約期間の途中で打ち切られてしまい、自分のせいかなあ、
 と落ち込むこともある。なかなか恋人ができないのも困りました。
・派遣社員を2年ぐらい楽しんでから結婚するという、漫然と期待していたコースをたど
 れそうもない。焦りを感じはじめるうちに、一線を終える日がやってきた。  
・結局のところ、10年も続いたのは「恋人ができなかったから」だと女性は明快に言う。
 しかし、恋人ができない、できても長続きしないのは、男性の存在があったからだろう
 と私は思った。  
・女性に恋人らしい男性がいる時期は、男性とは食事だけのつきあいだ。男性に恋人の存
 在を知らせたことはないが、そうと察するのか深くは追ってこないという。 とはいえ、
 戻ることができる相手がいるという女性の余裕が、若い恋人を焦らせ、追いかける立場
 に押しやる。だからまた女性は余裕を持ってしまい、恋愛に盛り上げっていけないとい
 う悪循環だったと推測される。
・女性と男性はこの10年で、箱根、仙台、山梨と3回の国内一泊旅行をした。ふだんは
 月に3回か4回デートする。たいていは食事だけだが、月に一度ほどは彼女の部屋に寄
 る。 

・ここまで紹介した3組は、なぜ10年以上も続いてきたのか。30代〜50代の3人が、
 彼との関係を深めていくプロセスを振り返ってみると、二つの共通項が浮かび上げって
 くる。まずは「旅行」である。不倫ではない恋人や友人との関係でも、旅行は間柄を一
 歩深める。さらに不倫カップルにとっては、不倫につきもののモヤモヤをリセットし、
 長続きさせる効果をもたらすのだ。秘密の旅行を実行できだのは、不倫を続けやすい環
 境を作り上げたというあかしでもある。不倫カップルにとって、旅行とは、一つの「橋」
 を渡り、次のステージに移ったことを意味するのだ。
・女性が男性を自分の部屋に招き入れるのも、三人の共通項であり、もう一つの「橋」で
 はないだろうか。私が男性の立場だったら、部屋に招き入れてくれるシングル女性はと
 てもありがたいと思う。彼女の部屋で会えば、人目を忍んだり、時間と場所を合わせた
 りする手間がかからない。お金も使わずにすむ。 
・不倫の常習犯である40代の男性は、「ポイントは自分も一緒にキッチンに立ち、手伝
 うこと。そうすれば機嫌を損ねることはない。彼女だけにお金を使わせないほうがいい
 が、「はい食費」と現金を渡すと、女性は「私はあなたの妻じゃない」と反発しがちな
 ので避け、おしゃれっぽい輸入食品などを持参する」という。 
・シングル同士であれば、お互いの生活ぶりを見せあうのは、「人生をともにするマート
 ナーになるかもしれない」という未来への第一歩でもある。しかし、既婚男性との関係
 性を考えれば、女性には失うものも大きい。人を部屋に入れるということは、自分の生
 活ぶりや、受けてきたしつけ、価値観など本当の素顔を見せることになる。手の内をさ
 らけだした側は、どうしても弱い立場になる。まして部屋を待ち合わせ場所にしたりす
 ると、女性はつねに「待つ側」に置かれ、何時に会うかという決定権を男性に渡すこと
 になる。部屋に入れるだけでなく、手料理をふるまい、パジャマや着替えを置き、彼の
 着た服を洗濯するうちに、非日常性はどんどん薄れ、「生活」になっていく。 
・旅行する、部屋に入れるというのは、彼を生活の一部に繰り入れるということだ。いっ
 たんできあがった日々の暮らしをくつがえすには、大きなエネルギーがいる。このまま
 不倫を続けていいのか、自分はどうすべきかを自問しにくく、十年の日々が流れていっ
 てしまうのだ。 
・彼女たちは旅行や手料理という橋の前に、「性交渉する」「恋人同士であると認識し合
 う」という橋も渡っている。一つ渡るたびに二人の関係性はさらに進み、お互いに必要
 な存在になっていく。 
・しかし、大きな意味を持つ橋があることに当事者の多くは気付かない。彼は妻と恋人と
 いう、二人の女性を使い分けている。家族や社会に対して秘密をもち、嘘をつき続けて
 いる。恋人とのデートを楽しんだ一時間後に、何食わぬ顔をして「ただいま」と帰れる
 人なのだ。既婚男性と恋人関係になるとは、彼の嘘を認め、受け入れ、共犯者になると
 いう橋を渡ることに他ならない。 
・中には、はじめから甘い紅茶を選んで求める人もいる。「私には不倫のほうが都合がい
 い」と自認する女性たちだ。 
・シングル男性とも付き合ってみるが、長くて半年で終わってしまう。不倫とそうでない
 恋愛をサンドイッチのように繰り返すうちに、不倫している期間が10年を超えた。
 「楽なんですよ。とにかく楽。結婚している人は、ホントに楽。一生付き合うわけじゃ
 ないし、いっときでしょう?楽ですよ、やっぱり」不倫の恋人とは一緒にグアム旅行を
 したことがある。しかしシングル男性とは、そこまで深い関係にならないのだという。
 「シングルはめんどうくさい。別れるのも付き合うのも、誕生日とかに、儀式みたいに
 プレゼント考えたり、そういうのもウザイ。さらっと付き合えない。結婚とかまで考え
 て付き合うのか、ヤルだけか、みたいな自分の気持ちを、決めなくちゃならない感じが
 する」 

<ケース4>
・半導体メーカーの営業課長補佐をつとめる女性(41)はアメリカのビジネススクール
 に半年間留学した経験もある。英語はもちろん得意で、海外出張も気軽にこなす。キャ
 リア系女性の友人がたくさんいる。都内の出身で、父は高校教師、母は公務員。28歳
 で一人暮らしをはいめ、現在の住まいのマンションは、女性に人気の高い目黒区内にあ
 る。友人たちのアドバイスを得て株で利益をあげ、購入した2LDKだ。そんな彼女の
 不倫相手は、5歳ほど年上の職場の元上司である。 
・「結婚したいですよ。いい人がいたら、すぐにでも。不倫なんて、すぐにやめます」し
 かし同世代のシングル男性には、この外見で、このポジション、このライフスタイルの
 女性は、荷が重いのではないか。 
・「年齢的につりあう男性とデートすることも、たまにはありますよ。でも迷うんですよ。
 収入はたいてい私のほうが多いので、女性だからおごってもらっていいんだとは割り切
 れない。」 
・妻に話せば、バカにさせるか、無視されるかするであろう愚痴や、上司や同僚には言え
 ない自慢話を、うれしそうに聞いてくれる女性は、恋人にとって、よく理解者だ。経済
 的に自立しており、将来も安定しているから、彼女の身の振り方を心配する必要もない。
 仕事と友だちに恵まれ、イキイキとしていて明るい。男性にとって、理想の不倫相手と
 言える。 
・「今の彼は、私のほうが癒していると思いますよ。私に癒された彼と過ごすことで、私
 も癒されているといったらいいかな。自分の弱いところは見せないようにしています。
 しょせんは不倫ですから、全部をさらけだしても、支えてもらうことはできません」
 だから結婚したいという。
 
<ケース5>
・大手不動産会社勤務や派遣社員を経て、現在は都内の宝石店で販売員をしている女性
(45)は、この十数年の間に、5人の男性と不倫した。一人の相手とは長くて3年だが、
 合計すれば10年を超える。 私が興味を持ったのは、この女性が恋人たちからお金を
 もらっているからである。
・お金をもらうのは、古い言葉を使えば「おめかけさん」、職業的な愛人というイメージ
 がある。お金のやりとりは、不倫をくるんでいる「恋愛」というオブラートを引き剥が
 すことになる。それに普通の男性の財力では、それを10年続けるのは不可能だ。 
・女性は都内にマンションを三軒所有しており、文京区にあるその一つに自分が住んでい
 る。あとの二軒からは、合計して月に約20万の家賃収入があるそうだ。株も時価にす
 ると千万円分ほど持っており、よりよい投資先を探しているところだという。こうした
 収入や資産が、女性にとっては誇りであるらしい。 
・「結婚も出産もしていないけれど、私はこれだけのものを持っているんだから、負け犬
 じゃない。不倫ばかりとはいえ、楽しくおいしい思いをしてきた私は勝ち組だ」もっと
 も資産のすべてを男性から得たわけではなく、両親からの援助も大きい。 
・不倫のきっかけは、27歳で婚約者と別れたとだ。当時の彼女は上司の紹介で知り合っ
 た、7歳年上の大手商社マンと恋をした。お互いの両親にも紹介しあい、結婚ば秒読み
 がと思われた。が、式の日取りを決めたいなどと、具体的な話をすると「ちょっと待っ
 て」とあいまいに逃げる。不審に思った彼女の父親は、私立探偵を使って調べた。する
 と男性には、合鍵を渡してある女性が別にいることがわかった。 
・彼女の父親は彼を認めなかった。彼女と絶交させただけではなく、科rにわび状を書か
 せ、さらには「誠意を形で示せ」と、お金を請求した。金額は「母とのヨーロッパ旅行
 代にしておしまい」とかで、百万円ほどだったらしい。 
・彼女は、これまでの不倫の相手から「お手当て」的なお金を進んで受け取っているし、
 別れるときには、数十万円から数百万円のお金をもらっている。セミプロではないかと
 私は思うが、本人は「恋愛ですよ。好きな人としか付き合っていません」と言い切る。 
 「昔から年上の男性が好き。婚約した相手も七つ年上だった。どっしりしていて、力が
 あって、女性のめんどうぐらい余裕で見られる大人の男性にひかれるんです。お金や力
 がある人は、自分に自信を持ち、堂々としています。ない人は卑屈でダメ。私は見た目
 や若さより、余裕に男性の魅力を感じます」「既婚男性って、やっぱり落ち着いてます
 よね。シングルはどこか余裕がない。だから既婚の人にひかれちゃう。年齢的にも、シ
 ングルは無理でしょう」「たくさんじゃないですよ。月に5万とか10万とか、誕生日
 にはバッグ代で60万もらったけど」彼とは月に二回ほど会うという。外で食事をして、
 彼女の部屋でひとときを過ごすのがパターンだ。
・生活感を出さないように工夫もしているという。全面所やお風呂場は、洗剤や買い置き
 のシャンプーが目にふれないようにしまいこみ、花や香水びんをさりげなく飾っておく。
 ベッドかばーやシーツをショッキングピンクで統一する。 
・「別れはいつも私から言い出します。潮時かなと思ってしまう瞬間があるんです。それ
 が来ちゃうと、もうダメですね」たとえば、彼の来訪にそなえて部屋をかたづけ、花を
 飾る。愛情がある間は「楽しいな」とワクワクしているが、ある日「めんどうだな」と
 ふと思う。それが「潮時」のサインだという。恋のときめきがなくなったらおしまい、
 そういう意味だという。 
・別れの理由は「潮時」とロマンチックだが、その処理はシビアだ。「お世話になったこ
 と感謝しています。好きだけど、いつまでも続けてはいけないと思うんです。ゆっくり
 考えたいから、ハワイあたりに一人旅させてもらえると嬉しい」さらに、こう付け加え
 たという。「年長の女性に相談に乗ってもらえたらと思うけど、あなたの奥様に相談す
 るわけにはいかないし・・・」さりげないおどしまでして、お金をもらっているのだ。
・家庭で培われた「おねだり体質」と、父親から継承した「誠意をお金で示す」という感
 覚、そして将来への安心を得たい気持ちが、彼女をそうさせているのだろう。お金と力
 のある男性に守られていたいという願望と、お金への執着が満たされている日々は、彼
 女なりに幸せなのかもしれない。 
・私は、相手の男性が私に向ける感情を、彼から送られてくるメールの回数や長さではか
 ってしまうことがある。物差しがメールか金銭かというだけで、愛情の量を確認してい
 たいという思いは共通するのかもしれない。 

・「第四世代」である現在の二十代は、どんな不倫をしているのだろうか?私が「彼女は
 十年不倫の候補者だ!」感じた二人を紹介しよう。 
・愛知県内の鉄鋼メーカーに勤務する女性(26)は、不倫相手には社内の男性や、社外
 のサークルで出会った人もいる。短大を卒業して入社以来、4人と付き合っている。彼
 女は今も両親、一つ上の兄と4人で暮らしている。
・「エッチはいつもじゃないです。月に2回ぐらい、かな。場所?それはやっぱり、ホテ
 ルですけど、泊まりじゃなくて休憩です。それは仕方ないですよ。」
・結婚願望は「すごく強いです」という。「私は仕事無期ではないので、結婚したほうが
 いいと思っています。姉は専業主婦ですが、けっこう楽しそうですよ。私、子どもも好
 きです。玉の輿とかでなくていいので、普通の主婦になって、普通の家庭が作りたいで
 すね」  
・「ホントはね、不倫と呼ばれたくないんです。不倫かもしれないけど、恋愛だから。好
 きな人に奥さんがいただけなんです」」「彼は、彼なりに過程を大事にしてます。私の
 夫になる人も、うまーくだましてくれるなら、それでいいです」 
・相手の男性が、彼女との飲食代を、必要経費として会社に請求している。それが「重た
 い秘密」なのだという。いったいどんな男性なのかというと「とても不倫しそうにない
 堅物で、不倫は私が初めて。奥さんとはセックスレスだって」
・二十四歳にして、すでに二人の男性との不倫を経験している女性は、長野県の出身だ。  
 都内のやや有名な私立大学を卒業した。在学中は両親に一人暮らしは許してもらえず、
 門限があり、男子禁制の女子寮で四年間を過ごしたという。就職先が見つからなかった
 ため、今は都内の社会保険労務士事務所で事務のアルバイトをしながら専門学校に通っ
 て、資格の取得をめざしている。
・生活費や学費は、ほとんど親の仕送りに頼っている。父は中ぐらいに会社を経営し、母
 は専業主婦だという。 
・結婚願望が強く「家事と仕事の両立」という言葉を繰り返す保守性と、どう見てもつり
 あわない相手との泥沼不倫。そのアンバランスの理由が少しずつ見てきた気がする。彼
 女は親に反発しつつ、その価値観を継承しているのだ。両親は仲はよくないという。父
 親は浮気を繰り返しており、母は、そのたびに実家に数日間帰ってしまう。 
・「父が愛人のところに行こうとして、車を出して、母がそれをはだしで追いかけて、わ
 めいて、みたいなことが何度もあって。近所の人はみんな知ってました。学校でも知ら
 れてた。すごく、つらかったです」 
・「普通の家庭で、普通に育ちたかったですね。母親が、オンナをむき出しにするところ
 を見せられるの、ホントにいやでした。父も憎かった。でも母も口うるさかったりする
 し、仕方ないかなと思ったり」 
・結婚への焦りは、親との葛藤から逃れたい思いや、「自分はああはならない」という決
 意の表れかもしれない。 
・彼女のお相手の男性に話を聞いてみると、「不倫をOKする子は、どこかスキがあるか
 らすぐわかる。よく見るとかわいいんだけど、自分の魅力を演出できず、もてないタイ
 プだな。三粒で千円のチョコレートなど受け取りやすいプレゼントをしたり、どこか旅
 行すると聞けば、そこのガイドブックをあげたりして口説く。見え見えなのに、優しく
 された経験がないから喜んじゃうんだよね。ホテルも「えー」とか言いながら、結局は
 ついてくる。男につくしているようで、実は男にたよっている。複雑だから、ぼくみた
 いなオジサンがちょうどいいんだよ」
・不倫と恋愛を混同せず、「おいしい思いができるなら、不倫でもOK」と、不倫のメリ
 ットを、ストレートに肯定している。不倫の第四世代は「そういえば、コレって不倫な
 のよね」の世代である。だからこそ「私は不倫にのめりこんだりしないから大丈夫。お
 いしいところをいただくだけなの」という自己過信がありはしないか。 
・不倫する自分への葛藤がないから、すいすいと月日がたち、ふと気づけば10年がたっ
 ている。不倫の第四世代は、そんな十年不倫カップルを多く生み出すかもしれない。
・世代のちがいをこえて共通するのは、彼女たちには「不倫が向いている」という印象だ。
 もう一つ共通するのは、彼女たちの独特な雰囲気である。いかにもモテそうな、わかり
 やすい美人ではないが、ひとひねりした色気や魅力があるのだ。秘密の恋人の存在を隠
 すための言動も、事情をしらない人にミステリアスな印象を与えるだろう。つまり不倫
 によってみがかれる魅力は、結婚対象になる男性たちを遠ざける。そのかわり、女性に
 対してひとひねりした欲求を持つ既婚男性の目をひきつける。だからまた次の出会いも
 不倫だという、スパイラル構造に陥るのではないだろうか。
   
社会の後押し
・かつて強烈だった「結婚しろ」というプレッシャーも、どんどん薄まりつつある。私が
 十代のころは「女性=クリスマスケーキ」だった。二十五歳を過ぎたらもらいてがない
 と言われていた。やがて大晦日、つまり「三十一歳」までは大丈夫と言われるようにな
 り、初婚年齢はどんどん上昇していった。 
・結婚へのプレッシャーには個人差が大きいが、今はどんな女性の周囲にも、非婚、晩婚
 女性のロールモデルがたくさんあり、「私だけがシングルなのではない。寂しさ、みじ
 めさを感じる必要はない」と考えることも可能だ。 
・シングル男性の意識も変化し、かつてのように「大黒柱として一家を支える」、なんて
 発想はないらしい。あっても、若い男性たちの収入は伸び悩んでいる。不確定要素の多
 い「結婚」をベースに人生設計するのは危険にさえ感じられる。 
・私は千代田区内に住んでいるが、四十平米に満たない一人暮らしサイズで、おしゃれな
 外見や設備を誇るマンションが、近所にどんどん建ちあがっている。シングル女性をタ
 ーゲットにしているとしか思えない。 
・女性のためのホテル宿泊プラン、女性だけは浴衣を選べる温泉宿、恵比寿や表参道など
 女性に人気のファッションタウンに次々と登場するおしゃれな複合ビル、高級ブランド
 の銀座への進出などが、シングル女性の可処分所得を、グルメとおしゃれと旅行にふり
 向けさせる。 
・これは冗談だが、子どもの数を増やすには、シングル女性を対象にした産業を規制し、
 女性グループが肩身のせまい思いをするようなカップル社会を作り上げるのが早道だと
 思う。「少子化社会」と「不倫の増加」はリンクしているのだ。
・しかし”優雅なシングル生活”を送る女性たちも、将来や健康など不安のタネは多い。
 性の充足や、人肌の恋しさなど、マンションや女友だちやスポーツでは満たされないも
 のもある。ホルモンバランスの崩れから更年期障害がひどくなったり、不眠症に陥った
 りする女性も多い。  
・この十年の間に、不倫事情を一変させるツールが一般化した。ケータイとパソコンであ
 る。ケータイとパソコンの出現は、不倫の約束を取り付けやすくしただけではない。か
 つては居間に置き、家族で共用していた電話を、今は各自がポケットの中にしのばせる。
 人と人とのつながりが、家族や会社単位から、個人単位へと変化したのだ。居間にある
 固定電話に縛られている既婚男性は、家族の中の「夫」だが、ケータイを手にした途端、
 まだまだ恋愛のできる「一人の男性」へと変貌を遂げる。
・また、不倫は無理のある関係から、女性の側に「秘密の重み」「寂しさ」「ワリをつく
 っている感」などのほころびが生じる。ケータイやパソコンというパーソナルな通信ツ
 ールは、彼女のさびしさを埋めるのにも役立つ。  
・ケータイに象徴されるパーソナルな人間関係を重視する社会は、個室のあるレストラン、
 温泉旅館の露天風呂つき客室など、「二人きり」になれる場を多く生み出している。 
・現代社会のシングル女性が抱える心のほころびを、「不倫」が縫い合わせている。無理
 に縫い合わせたために、また別の場所にできた新たなほころびは、えータイなどパーソ
 ナルな通信ツールと、不倫カップルが享受しやすい娯楽やイベントがフォローする。 
・不倫という行為をのぞけば、彼女たちの仕事ぶりやライフスタイは、この社会に歓迎さ
 れているのだ。不倫カップルが増加したのは、社会の後押しがあるからこそなのである。
 この社会は不倫を必要としているのである。とはいえ、シングル女性の多くは、結婚を
 望んでいないわけではない。「いい人がいたらすぐにでも結婚したい」誰もがそう口を
 そろえる。ただ問題なのは、何をもって「いい人」とするか、である。
・この社会は、本来は反社会性の高い不倫という関係を必要とせずにいられないほどに、
 急激な変貌をとげている。その中で生き抜こうとあがくうちに、思わぬ「生きづらさ」
 をかかえてしまっている女性たちも少なくない。

・自動車販売会社に勤める女性(44)は、都内の実家を出て一人暮らしをはじめたが、
 都心から離れた府中市内の七畳のワンルームで、家賃は6万円だ。季節はずれの服をま
 とめて実家に運ぶなど、荷物を最低限にとどめている。貯金と株で、2千万円以上の資
 産があるそうだ。  
・彼女のズレの根っこは、生い立ちにあるらしい。「母が専業主婦で、同居の姑とうまく
 いかなくても、どこへも逃げられないのを感じていました。一人でも生きていられる人
 になりたかった」母と祖母の確執はかなり深く、彼女はその間で消耗した経験がたびた
 びあるという。 
・「老後は不安だから、まずお金ですね。いつまで続くか、本当は別れたほうがいいと思
 うけど、年齢を考えたら、ますます別れられない。こわくなってきちゃいました」
・私は彼女の「不倫と言わないで」という発言が気になっていた。既婚男性の恋人がいる
 シングル女性を取材すると、これに類する発言をする女性には、一定のパターンがある
 ことに気づいていたからだ。恋人のことを本気で好き、あるいは本気で好きだと思い込
 んでおり、「不倫したかったわけじゃないの。好きになった人に、たまたま奥さんがい
 ただけ」と考えている。どちらかといえば、つらい恋をしている自分に酔うタイプだ。  
・男性が口にしがちな「妻とは冷え切っている、好きなのは君だけだ」という、陳腐とも
 受け取れる言葉を素直に受け止める。会社の経費で愛人と遊びまわるセコさを「彼には
 それだけの力がある」と理解する。 
・「結婚する前に出会いたかった」既婚男性がシングル女性を口説くときの常套句の一つ
 である。
・コンピューター・ソフトメーカーの事務職員の女性(38)は、彼から「結婚する前に
 出会いたかった」と言われたそうだ。既婚男性がシングル女性を口説くときの常套句の
 一つである。どうやら彼女は、彼が妻と別れ、自分と結婚してくれるのを期待している
 らしい。しかし彼に向かって「奥さんと別れて私と結婚して」と言ったことはなく、将
 来について話し合ったこともないという。 
・結婚の話を持ち出さなかったのは、それを持ち出すことで、彼を追い詰め、失うことに
 なっては困るという打算もあるだろう。しかし、それだけではなさそうだ。パートナー
 に配慮して、自分の感情を抑える。自分は一歩下がって、男性を立てる。彼女は昔なが
 らの良妻賢母のタイプなのだ。
・彼のほうは、すでに生活の一部になっている彼女を手放したくないが、責任はとりたく
 ないし、夫婦の仲も良好だから、離婚に踏み切る理由もない。やがて彼は「なんとかし
 なくちゃいけけないな、と思っているのですが」とつぶやいた。 
 
・この時代にあって、理想のパートナーにまぐりあい、社会からの追い風を受けて、10
 年以上にわかって関係を保ち続けられるのは、「幸せ」ともいえる。しかし、彼女たち
 が「理想の男性」に妻がいるという現実と折り合いをつけるのは、さまざまな能力をみ
 つにけなくてはならない。寂しさに耐える力もそうだし、男性に頼らない生活設計や将
 来への備え、白黒つけずに清濁あわせのむ度量や、女友だちネットワークを広げていく
 必要もある。ときどき会う相手さえいれば、一人でも生きられるという、”不倫体質”
 に変わっていくのだ。
・「不倫」という関係に対して、男性と女性では意識のちがいがあることに、彼女たちは
 気づいているだろうか。不倫の当事者であるシングル女性は、既婚男性との関係を「恋
 愛」だと考えている。彼女に不倫の悩みを打ち明けられた女友だちも「つらい恋をして
 いるんだね」と同情する。しかし男性はどうだろう。男性たちからは、こんな言葉を聞
 いた。「純粋な気持ちで不倫する男なんて見たことないから、不倫したことがある女は
 ”遊ばれた女”に見える」「男友だちから不倫の自慢話を聞いたことがある。しかし不
 倫は不倫で、恋愛の打ち明け話はまったくちがう」「女性は不倫も恋愛の一種だと思っ
 ているかもしれないが、大半の男性は「浮気」だと思っているはずだ」「不倫をOKす
 る女性は、恋愛やセックスに対して物わかりがよく、軽くて、開放的なんだろう」
・女性が考えている以上に、不倫する女性に対しる男性の目はきびしい。そして不倫カッ
 プルの女性は、自らの不倫パートナーにも「しょせんは不倫する女」と、見くびられて
 いるかもしれない。しかも不倫するシングル女性は「加害者」でもある。慰謝料の請求
 も可能な「被害者」がいることを忘れてはならない。  
 
十年不倫された妻たち
・夫の裏切りは、どうして妻にばれたのか。調査依頼に現れた妻たちが状況証拠として挙
 げるのは、高速券やレストランのレシート、クレジットカードの請求書、ケータイやパ
 ソコンのメールが多いという。メールなどすぎに削除をすればよいものを、いつまでも
 残しておく人も多いようだ。逆に、着信記録も送受信メールもすべて削除してしまい、
 かえって怪しまれる場合もある。「男はロマンチストだから、何度も読み返したいもの
 なんでしょう。愛人からのケータイメールをパソコンに転送して保存している夫もいま
 したよ」 
・「メールの着信音が聞こえたのに、ケータイを出して見ようとしない。私が「いいの?」
 と聞くと「いいんだ、どうせ迷惑メールだ」と変な言い訳をする」「それまではほった
 らかしだったケータイを、風呂場の脱衣所まで持ち込むようになった。おかしいと思っ
 て開いたら、暗証番号でロックをかけてあった」「夫は妻の手のひらの上で踊っている
 のに、「ばれっこない」とあなどっている。だから、つい、痕跡を残すんですよ」
・夫のお相手は、妻の見知らぬ女性だというケースが7割、友人や会社関係など妻の知る
 人だというケースが3割だそうだ。知っている人だと、妻の衝撃はさらに大きい。
・そうした妻たちの寝るときの服装を聞いてみると、十人中九人が色気のないパジャマを
 着ているという。そうじゃなくてネグリジェを着なさい、夫の前で着替えたりせず緊張
 感を保ちなさいとアドバイスします。  
・不倫する男性は好奇心、向上心、バイタリティーがあり、女性にとっても魅力的なので
 はないか。「英雄、色を好む」は本当だと思います。 
・夫は、最後は妻に戻るんです。不倫は、生活、お金、考え方の違いも関係ない、都合の
 いい間柄だから続くのであって、夫は妻に「もう我慢できない」と切り捨てられたら困
 るんです。調査などのからまない不倫を長く続けている男性は、女性の心のツボを心得
 ているのでしょう。 
・男女とも既婚者というダブル不倫は長く続くが、既婚男性とシングル女性の組み合わせ
 は、男性にその気がないのに女性の結婚願望が高まり、逆に、男性が「妻と別れる」と
 真剣になってしまったりで混乱が生じ、長続きしにくいという。 
・ばれずに不倫を長く続けるには、コツがあるそうだ。まずは会う回数をしぼること。う
 まくいっているケースでは、月に1〜2回というのが多い。それから「現地集合・現地
 解散」だ。特別なことをすると、楽しいから癖になり、ついまたやってしまい、人に見
 られるリスクが高まる。回数や会う場所について、はじめにルールを決めておくのも有
 効だという。また「打ち明ける相手を厳選する」ことも必要だ。女性はつい、友だちに
 「私はこんなうまく不倫をしているよ」と自慢してしまいますが、聞いたほうは、黙っ
 ていられずに人にしゃべります。相手の妻に知らせるおせっかいな人もいます。 
・離婚するつもりで証拠をつかむなら別ですが、家でそこそこ”いい夫”なら、よけいな
 ことは見ないのが大事です。夫のケータイを1回でも見てしまうと、もうやめられずに、
 癖になります。それでケータイにロックをかけられたりすると、大きなショックを受け
 ます。浮気されて「私も悪いんだ」と思う人は、かえって浮気をされないと思います。 
・シングル女性が、既婚男性との恋愛に少しずつ慣れていくのと同じように、妻たちの多
 くも、それぞれのやり方で夫の不倫を受け入れていくのだなあと実感する。それは夫に
 不倫を続けやすい環境を提供することであり、苦い選択だと言える。また、気になるの
 は子どもたちだ。父親の関心が外に向き、母親が苦悩している家庭では、何が起きてい
 るのだろうか。 
・意外なことに、妻を裏切って不倫する男性は「奥さんに従おうとするのが基調」だとい
 う。妻に従おうと我慢し、緊張している人が多い。ではなぜ従うのか?それは「見捨て
 られ不安」が根底にあることが多い。いい夫、いい男、いい父ができなくなったときの
 不安をかかえている。それを続けようと我慢や緊張や不安で消耗し、「きつい自分」を
 棚上げして不倫するのです。 
・見捨てられ不安の強い夫は、妻と向き合い、親密になるのを恐れる。親密とは、自分を
 ひらき、わかちあうことですが、自己評価が低い人は、それがこわい。奥さんと向き合
 うのを避けるために、仕事、酒に逃げるように、不倫に逃げる。不倫関係にケアを求め
 るのです。 
・不倫に逃げる男性は、妻以外の女性に接近するときも、自分の気持ちを抑えて相手に従
 おうとするパターンを踏襲する。「背伸び、がんばり、過剰な気遣い、サービスをする。
 いっぱいケアをしてあげながら、時には相手にもたれかかったり支配的になることもあ
 るでしょう。それは裏返しのパターンです。では、そうした男性に心を奪われるシング
 ル女性とは?満たされず、自信がなく、寂しいが、「本当に親密になると捨てられてし
 まうのでは」と、同様の不安を持つ女性です。
・そうした女性は、逃げ場を求めている男性を「彼は私を必要としている」とかぎとる。
 そして「助けてあげたい」と思う女性は、「自分も助けてほしい」女性である。「カギ
 とカギ穴のように、お互いが求めているから、どこかで出会ってしまう。不倫とは、似
 た者同士が、結婚のように向き合わなくていい関係を求めて結びついた、必然的な関係
 と言えるでしょう。  
・満たされず、自信がない女性は、日々、自分に向き合うつらさや、本当の自分を相手に
 知らていき、見捨てられるかもしれないという不安や恐れを忘れるために、不倫にのめ
 り込みます。見捨てられ不安が強い男性は、「自分が相手を見捨てる」ことに強い罪悪
 感を覚えるために、妻も愛人も切りきれず、長期化します。そして、夫婦関係はさらに
 恐れと緊張に満ちたものになります。不倫していても、していなくてもつらいという状
 態になってしまいます。 
・こうして家庭に育った子ともたちは、どんな影響を受けるのか。父親の不倫は、子ども
 にとって「喪失体験」です。不倫と気づかなくても、親の関心が外に向かっていること
 は感じ取れるのでしょう。面倒を見てくれるはずの親が、どうかに行ってしまうかもし
 れないという不安をかかえます。さらに大きいのは、裏切られ、傷ついている母の姿で
 す。子どもにとって、母親は「厳しく、怖い存在で従わなければならない」一方で「無
 条件に甘えさせてくれる」という二面性を持つ存在だ。両者にバランスがとれていれば、
 あるときは従い、あるときは甘えることができますが、母が傷つき、孤独や不安を抱え
 ていると、子どもは母を支えるために「自分を抑えて母の期待にこたえよう、従おう」
 とします。ここに人への恐れと緊張が生じてきます。
・アルコール依存症の親を持つ子どもが、親との関係をうまく築けず「アダルト。チルド
 レン」になるのと同じ現象が、不倫のある家庭でも起きる可能性があるという。そうい
 う男の子が成長して「夫」になると、妻に向き合うことができず、苦しくなってくる。
 女の子が成長して「妻」になると、夫への見捨てられ不安から、過干渉になり、夫が苦
 しくなってくる。つまり、不倫に逃げずにいられない家庭が再生産されるのだ。印象で
 すが、不倫している親の子は不倫し、離婚している親の子は離婚するという傾向が明ら
 かに存在します。 
 
十年不倫が終わるとき
・結婚したくてもできない人は、さびしい老後かもしれない。でも、したくないからしな
 かった人、つまり結婚しない人生を自分で選んだ人は、ちゃんと準備もできているし、
 さびしくなんかないと思っているようだ。 
・なんといっても「一人の家庭」は快適だ。目の前に夫という家族がいたら、ほうってお
 かれたり、裏切られたりしたときの孤独感は深いだろう。シングルなら、人間関係を求
 める相手は友だちなど対象が広いから、孤独感を薄めやすい。これは、結婚生活をやめ、
 一人暮らしに戻った私自身の実感でもある。自分なりの生活パターンができあがるにつ
 れて、寂しさが忍び寄ってくる隙間は押しつぶされていくのだ。 
・かくして誰にも気がねのいらない、「一人の家庭」を築き上げ、さらに「一人」にみが
 きをかけた十年不倫の女性たちは、不安や迷いはあるにしても、根っこに揺らぎがなく、
 生き方の軸が安定している。 
・もっとも、十年不倫の女たちが安定していたり、一人で生きる姿があっぱれだったり、
 いさぎよかったりすればするほど、彼女たちの「ワリをくっている感」は増す。心もふ
 ところも痛めずに恋愛を楽しもうとする既婚男性にとって、彼女たちは「都合のいい女
 だからである。10年続けることができたのは、彼女たちが経済的に自立し、男性の保
 護をあてにせず、マンションを買うこともできる、「いちおう勝ち組」に属しているか
 らでもある。 
・彼女は不倫を納得し、一人でも生きていけるようになればなるほど、男性に都合がいい
 ばかりでなく、結婚は遠のく。不倫相手にいくら尽くしても将来の保証などの見返りは
 期待できない。 
・強がりではなく、そう言えそうな安定感が十年不倫の女たちにはある。不倫という関係
 を許容する中で、清濁あわせのむすべを心得てきた彼女たちは、達観したようなところ
 があり、自己抑制もきいている。いざ別れるとなれば、スパッと決断する強さもある。
 女同士で助け合うネットワークや、趣味や、孤独に耐える力をもっている。自分の魅了
 を演出するすべも心得ている。自分の力ではどうにもならないものには頼らないという 
 いさぎよさもある。自分で自分のことを決定できて、責任もとる。生活の基盤も整えて
 いる。人にどう思われようと、個人のレベルでは、状況に適応してうまくやり、得るも
 のもあったと納得しているのだ。
・不倫には初婚年齢や離婚率、出生率のように客観的案データが存在しない。表には出な
 い関係だからこそ規制ができず、対策の立てようもないまま、社会の深いところに広く
 根をはるのだ。そして「父の関心が外に向かっている家庭」や「母が父の裏切りに泣い
 ている家庭」で育った子どもたちは、将来、「結婚して幸せな家庭を築く」というロー
 ルモデルを肯定できるだろうか?
・不倫は、さらなる不倫を生む。十年不倫の女たちは、不倫を必要とする人、不倫で幸せ
 になれる人、不倫でしか幸せになれない人たちが、この社会にすでに層として存在して
 いるというあかしである。 
・十年不倫の女たちの納得が、落ち着きが、いさぎよさが、強さが、達観が、私は社会の
 大変動の前兆に感じられてならない。 
 
もうひとつの別れ
・十年不倫のカップルには、年月の流れを実感する物差しがない。誕生日、クリスマス、
 バレンタインデーといった恋人同士のイベントは、男性にとっては家族の行事でもある。 
 不倫カップルにとっては、避けて通りたい話題だ。
・小さな起伏はあっても、二人の関係性や将来を左右するようなドラマは基本的には起こ
 らない。イベントや通過儀礼はなく、新しいステージに入る可能性も薄く、淡々と月日
 が過ぎていく。十年不倫における最初のイベントは「出会い」であり、二度目にして最
 後のイベントが「別れ」なのだ。 
・どれほどつくしても、どんなに同情すべき点があっても、家族から見れば不倫女性は
 「敵」であり、社会や法律の保護は得られない。十年不倫を続けるとは、「困難にぶつ
 かっても自助努力で解決していきます」という生き方を選択した、ということなのだ。
 妻と不倫相手という、二人の女性の間を行き来する男性は、ストレスを受ける機会も多
 いだろう。お金や時間の無理を重ねていれば、睡眠や休養も充分にはとれない。つい酒
 量が増える。食事が不規則になるといったことも想像がつく。五十代、六十代で早すぎ
 る死を迎える可能性は少なくない。
・同じことは女性の側にも言える。ベースとなるパートナーとの関係が秘密であり、何の
 保証もないということは、それだけでもストレスフルだ。恋人をつなぎとめるための美
 容法や運動も、ある意味では、緊張を強いるストレッサーである。不自然は時間帯の逢
 瀬や、不安や迷いをまぎらせるための飲酒や喫煙が、生活習慣病をもたらしても不思議
 ではない。  
・私は十年不倫の女たちに、こう質問してみたいと何度も思った。「もしあなたが不治の
 病にかかったら、彼は最期まで看取ってくれると思いますか」「もし彼が死の床につい
 てあなたを頼ってきたら、すべてをなげうって面倒を見てあげますか」私がその質問を
 発したら、彼女たちは否定も肯定もせず、複雑な笑みを浮かべるような気がする。現実
 には、私はその質問を一度も口にすることができなかった。あまにも残酷な気がしたか
 らだ。 
 
あとがき
・結局のところ、十年不倫で得られるものは何だろう。私は「登山者の荷物と似ているな
 あ」とたびたび思った。リュックサックに詰めたお弁当、地図、雨具、カメラ、非常用
 食料、山道で拾った落ち葉などは役に立つし、思い出も作ることができる。しかし山を
 歩いている間じゅう、重たい荷物として肩にのしかかってくるのである。十年不倫の女
 たちが背負うリュックサックの中をのぞいて見てきた今、私はこう実感している。「も
 し不倫するとしたら、人生のトッピングにとどめ、ベースには据えずにおきたいものだ」