原発の制御棒の材質

Q.原発の制御棒はどんな材質でできていますか?

原子力発電所の制御棒は、通常、以下のような材質で作られています:
  • ホウ素(Boron):特にホウ素カーバイト(B?C)やホウ酸化銀(Ag-In-Cd合金)などが使われます。ホウ素は中性子を吸収する能力が高いため、反応を制御するのに適しています。
  • カドミウム(Cadmium):中性子吸収能が非常に高いため、制御棒の一部として使われることがあります。
  • 銀-インジウム-カドミウム合金(Ag-In-Cd):これも中性子吸収に優れているため、制御棒の材料として用いられます。
  • ハフニウム(Hafnium):中性子の吸収断面積が大きいため、制御棒の材料として評価されています。
これらの材料は、核分裂反応を制御するために、原子炉内で中性子を吸収し、反応速度を調整します



Q.世界の中でプルトニウムを燃料としている原発はありますか?

はい、世界にはプルトニウムを燃料として使用している原子力発電所があります。プルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマル計画がその一例です。この計画は、主に使用済み燃料から回収されたプルトニウムを再利用するもので、以下にいくつかの国とその具体例を示します:
  • フランス:フランスはMOX燃料の使用に関して先進的な国であり、複数の原子力発電所でMOX燃料を使用しています。
  • 日本:日本でもプルサーマル計画が進められていて、一部の原子力発電所がMOX燃料を使用しています。例えば、島根原発2号機が2009年にMOX燃料の使用計画を立てていました。
  • イギリス:イギリスでも特定の原子力発電所でMOX燃料が使用されていました。
一方で、プルトニウムを燃料とする原子力発電所の運用には、技術的な課題や安全性、環境への影響など、様々な議論があります。これらの国々では、プルトニウムの管理や再処理、MOX燃料の製造に関する技術や規制も重要な要素となっています。



Q.MOX燃料ではなく、プルトニウムのみを燃料とする原発はありかすか?

現在、プルトニウムのみを燃料とする商業的な原子力発電所は存在しません。原子力発電所で使用されるプルトニウム燃料は、通常ウランと混合されたMOX(Mixed Oxide)燃料として使われます。これは以下の理由によります:
  • 技術的・安全性の問題: プルトニウムのみの燃料を使用すると、核分裂の制御や熱特性、燃料の製造プロセスなどに多くの技術的及び安全性の課題が生じます。
  • 経済性と資源効率: プルトニウムをウランと混ぜることで、既存の軽水炉でも効率的に利用でき、資源の再利用効率が向上します。
ただし、研究や実験レベルでは、プルトニウムのみを燃料とする原子炉のコンセプトや試験が行われたことがあります。例えば、高速増殖炉はプルトニウムの生成と消費を同時に行う設計で、プルトニウムを主要燃料として使用しますが、これも商業化には至っていません。高速増殖炉の開発は主要国で進行中もしくは中断されていますが、現在運用されているものはありません。
したがって、商業的にプルトニウムのみを燃料とする原子力発電所は現在存在しないというのが正しい回答です。



Q.MOX燃料が使用済み廃棄物となった場合、その廃棄物はそのあとはどうなるのですか?

MOX(Mixed Oxide)燃料が使用済みになった場合、その廃棄物の処理は以下のようなステップを踏むことが一般的です:
  1. 冷却
    • 使用済みMOX燃料は非常に高温で放射能も強いため、一定期間(通常は数年から数十年にわたって)プール内で冷却されます。これにより放射能レベルが下がり、取り扱いが安全になるまで待ちます。
  2. 中間貯蔵
    • 冷却後、使用済み燃料は乾式貯蔵容器などに収納され、中間貯蔵施設でさらに長期間保存されることが多いです。この期間中に放射性物質の崩壊が進み、放射能レベルがさらに低減します。
  3. 再処理
    • 一部の国では使用済みMOX燃料を再処理する方法を採用しています。フランスや日本などでは、再処理施設で燃料から未使用のウランやプルトニウムを抽出し、これらを新たなMOX燃料や他の用途に再利用します。再処理過程で生成される高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体など)は最終処分場へ向かいます。
  4. 最終処分
    • 高レベル放射性廃棄物: 再処理過程で生成された高レベル放射性廃棄物は、非常に長い半減期を持つため、地層処分(深地中処分)という方法で深い地中に永久に隔離される計画が進んでいます。ただし、これには技術的・政治的な多くの課題があります。
    • 低・中レベル放射性廃棄物: 再処理で出る他の廃棄物(低・中レベル)は、より管理しやすい形で最終処分場に埋設されます。
  5. 国際的な動き
    • 国際的な協力や法規制の枠組みの中で、使用済み燃料や高レベル廃棄物の管理・処分方法について研究や議論が進められています。例えば、ユーラトムやIAEA(国際原子力機関)によるガイドラインなどが存在します。
日本では、青森県六ケ所村に再処理工場がありますが、最終処分場の選定や建設についてはまだ決定されていません。各国の廃棄物処理方法や政策は異なるため、具体的なプロセスや方針は国によって異なります。



Q.通常のウランを燃料とする原発でもMOX燃料を使用できるのですか?

はい、通常のウランを燃料とする原子力発電所(特に軽水炉)でも、設計や改造が適切に行われればMOX(Mixed Oxide)燃料を使用することができます。このプロセスは「プルサーマル」とも呼ばれます。以下にその詳細を説明します:
  • 設計と改造:
    • ウラン燃料だけを使用していた軽水炉でも、MOX燃料を使用できるようにするためには、燃料集合体(アセンブリ)の設計や炉心配置の変更、制御システムの調整などが必要になることがあります。MOX燃料はウラン燃料と比べて中性子吸収特性が異なるため、核反応の制御に影響を与えます。
  • 安全性の確保:
    • MOX燃料を使用するためには、燃料の熱特性や中性子経済、温度フィードバック等を考慮した安全評価や安全対策が求められます。これには追加のシミュレーションや実験が必要になる場合があります。
  • 規制と許認可:
    • MOX燃料の導入には、原子力規制当局からの許可が必要です。各国ではMOX燃料の使用に関する厳格な規制があり、安全性や環境への影響が評価された上で許可されます。
  • 実例:
    • フランス: フランスでは多くの原子力発電所がMOX燃料を利用しています。これは再処理政策の一環として、使用済みウラン燃料から抽出したプルトニウムを再利用するために行われています。
    • 日本: 日本でも一部の原子力発電所がMOX燃料の使用を計画・実施しています。例えば、島根原発2号機や高浜原発3・4号機などがプルサーマル計画の一環としてMOX燃料を使用しました。
  • 課題:
    • MOX燃料の製造コストや供給の面での制約、使用済み燃料の再処理とその廃棄物管理にかかるコストや技術的・政治的な問題など、様々な課題があります。
以上から、通常のウランを燃料とする原発でも、適切な準備と規制の手続きを経ればMOX燃料を使用することが可能です。ただし、それには技術的・経済的・規制的な複数の側面での対応が求められます。