自民党の憲法改正草案の問題点はなんですか?

Q.自民党の憲法改正草案の問題点はなんですか?

自民党が2012年に発表した「憲法改正草案」は、現行憲法のあり方を根本から変える内容を含んでいるため、憲法学者や弁護士、市民団体などから多くの問題点が指摘されています。

主な問題点は、大きく分けて以下の5つのポイントに集約されます。


1. 「立憲主義」の変質

憲法の本来の役割は「国家権力を縛り、国民の権利を守ること」です(立憲主義)。しかし、草案では国民に対して「憲法を尊重する義務」を課したり、家族の助け合いを義務化したりするなど、**「憲法が国民を縛る」**という形に変質していると批判されています。

2. 基本的人権の制限(「公益及び公の秩序」)

現行憲法では、人権は「公共の福祉」のためにのみ制限されますが、草案ではこれが**「公益及び公の秩序」**という言葉に置き換えられています。

  • 問題点: 「公の秩序」という言葉は範囲が非常に広く、政府にとって都合の悪いデモや言論を「秩序を乱す」という理由で抑え込む根拠になりかねないと懸念されています。

3. 第9条の変更と「国防軍」の創設

戦力不保持をうたう9条2項を削除し、**「国防軍」**を保持することを明記しています。

  • 問題点: 歯止めがなくなることで、集団的自衛権の行使が無制限に広がり、日本が他国の戦争に巻き込まれるリスクが高まるという指摘があります。

4. 「緊急事態条項」の新設

大規模災害やテロなどが起きた際、政府に権力を集中させる「緊急事態条項」が盛り込まれています。

  • 問題点: 内閣が法律と同じ効力を持つ「政令」を独断で出せるようになるため、国会のチェックが機能しなくなり、独裁的な政治を招く危険性が指摘されています。

5. 天皇の「元首」化

現行憲法では天皇は「象徴」ですが、草案では**「元首」**と明記されています。

  • 問題点: 戦前の「主権者としての天皇」への回帰を想起させるという意見や、天皇が政治利用されるリスクを心配する声があります。


比較まとめ

項目 現行憲法 自民党草案(2012年)
憲法の性格 権力を縛る(立憲主義) 国民に義務を課す傾向
人権の制限 公共の福祉(最小限) 公益及び公の秩序(拡大の恐れ)
第9条 戦力不保持・交戦権否認 国防軍の保持を明記
緊急事態 規定なし(個別法で対応) 緊急事態条項を新設
天皇の地位 日本国の象徴 日本国の元首

現在、自民党は議論を円滑に進めるため、この2012年草案をそのまま全面に押し出すのではなく、「自衛隊の明記」「緊急事態対応」など4項目に絞った改憲案を提示していますが、その根底にある思想は2012年草案と共通しているとして、慎重な議論を求める声が根強くあります。