安保関連法とは?

Q.安保関連法とは?

はい、安保関連法(正式には「平和安全法制」)についてご説明します。


? 安保関連法とは

安全保障関連法」は、2015年(平成27年)9月に成立し、2016年(平成28年)3月に施行された一連の法律の総称です。

これは、主に以下の2つの法律案で構成されています。

  1. 国際平和支援法(新法の制定)

    • 国際社会の平和と安全のための活動を行う他国軍隊への後方支援を可能にするための法律です。

  2. 平和安全法制整備法(既存法律の改正を束ねたもの)

    • 自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態安全確保法(→重要影響事態安全確保法に名称変更)、PKO協力法など、計10本の既存の法律を一括で改正するものです。

主な変更点と論点

安保関連法の最大の特徴は、「集団的自衛権の限定的な行使容認」と「自衛隊による他国軍隊への後方支援の拡大」を定めた点にあります。

  • 集団的自衛権の限定的な行使容認

    • **「武力行使の新三要件」**を満たす場合に限り、集団的自衛権を行使できることになりました。集団的自衛権とは、日本自身が攻撃されていなくても、日本と密接な関係にある他国が武力攻撃を受け、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある「存立危機事態」に対処するためのものです。

  • 他国軍隊への支援活動の拡大

    • 日本の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」や、国際社会の平和と安全を脅かす「国際平和共同対処事態」において、自衛隊が他国軍隊への支援活動(後方支援)を行うことが可能になりました。

これらの変更は、**日本国憲法第9条(平和主義)**との関係から、国会で大きな議論を呼びました。特に集団的自衛権の行使容認については、「憲法違反ではないか」という議論が活発に行われました。

他に、安保関連法の個別の法律の内容について詳しく知りたいことはありますか?

【高校生のための政治・経済】有事関連法・安全保障関連法#17 この動画は、安保関連法の背景にある有事関連法も含めて、法律の構成や経緯について解説しています。




Q.集団的自衛権の限定的な行使容認は、具体的にはどの条文にあたりますか?

ご質問ありがとうございます。

集団的自衛権の限定的な行使容認に関する根拠となる具体的な条文は、「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」(通称:武力攻撃事態法または事態対処法) の改正によって設けられた規定が中心となります。

特に、武力行使の根拠となる「新三要件」が定められているのは、この法律の第9条(「武力の行使の要件」)です。

新三要件を定めた条文

法律名 条文 内容(武力の行使が許容される要件)
武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(改正後の名称) 第9条 武力の行使の要件として、次の三要件のすべてに該当する場合に限り、武力の行使が可能であると規定しています。

この第9条に定められた「新三要件」が、限定的な集団的自衛権の行使を含む、自衛のための武力の行使を可能とする法的根拠となっています。

【武力の行使の「新三要件」(要約)】

  1. 我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態存立危機事態)が発生したこと。

  2. これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適切な手段がないこと

  3. 必要最小限度の実力を行使すること。

このうち、特に下線を引いた部分(「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し?明白な危険がある事態」)が、限定的な集団的自衛権の行使を可能にするための要件として追加されたものです。

補足:自衛隊の出動に関する条文

上記の武力の行使の要件を踏まえ、実際に自衛隊に武力行使を伴う出動を命じる権限を規定しているのは、「自衛隊法」の第76条(防衛出動)です。この条文も改正され、「存立危機事態」においても防衛出動ができるようになりました。




Q.この「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」は、どの法律の下に置かれたものですか?

この法律は、日本の有事法制(ゆうじほうせい)の中核をなす基本法として位置づけられています。

「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」(通称:武力攻撃事態対処法または事態対処法)は、特定の法律の「下」に置かれているというより、憲法の精神に基づき、国及び国民の安全を確保するための基本枠組みを定めた法律です。


この法律は、日本の有事法制(ゆうじほうせい)の中核をなす基本法として位置づけられています。

「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」(通称:武力攻撃事態対処法または事態対処法)は、特定の法律の「下」に置かれているというより、憲法の精神に基づき、国及び国民の安全を確保するための基本枠組みを定めた法律です。


? 法律の体系における位置づけ

1. 憲法(最上位法)との関係

  • 日本国憲法:日本の法体系の最高法規であり、平和主義(第9条)国民主権基本的人権の尊重といった基本原則を定めています。

  • 事態対処法は、憲法の下、「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保」という目的を達成するために制定されています。特に、集団的自衛権の限定的な行使容認は、「憲法解釈の変更」を経て、憲法9条が許容する自衛の措置の範囲内と位置づけられています。

2. 有事法制の中核としての位置づけ

事態対処法は、広義の「有事法制」を構成する一連の法律群の中で、最も基本的な枠組みを定める法律です。

  • 基本法(事態対処法)

    • 武力攻撃事態存立危機事態(集団的自衛権の要件)の認定対処の基本理念、国・地方公共団体・国民の責務など、大枠のルールを定めます。

    • 武力行使の要件である「新三要件」を規定し、他の関連法が発動する際のトリガーとなります。

  • 個別法(関連法)

    • 事態対処法の規定に基づき、各分野で具体的な措置を定めます。

      • 自衛隊法:自衛隊の出動や任務、権限の改正。

      • 国民保護法(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律):国民の避難、救援、武力攻撃災害への対処など。

      • 重要影響事態安全確保法(旧周辺事態法):自衛隊による他国軍への後方支援など。

これらの法律群は、1999年に成立した「有事三法」(周辺事態法、自衛隊法、日米相互協力及び安全保障条約第六条の実施に関する法律(日米ACSA))を発端とし、2003年、2004年、そして2015年の平和安全法制によって段階的に整備されてきました。

要するに、事態対処法は、日本の安全保障政策における行動の判断基準と手順を定めた最重要の法律として位置づけられています。


武力攻撃事態対処法によって定められた「対処基本方針」が、具体的にどのような手順で策定されるのか、といった流れについてご興味はありますか?




Q.「憲法違反ではないか」というのはどの部分を指しているのですか?

「憲法違反ではないか」という批判は、安保関連法制、特に「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」(事態対処法)による集団的自衛権の限定的な行使容認の点に集中しています。

この批判が指している核となる論点は、日本国憲法第9条との関係です。


? 憲法違反の指摘が集中した部分

1. 憲法第9条(平和主義)との抵触

批判の根拠は、憲法第9条第1項第2項です。

条文 内容(抜粋) 従来の政府解釈
第9条第1項 国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する 日本が国際紛争を解決する手段として戦争や武力行使をすることは一切許されない。
第9条第2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない 日本が自国を防衛するための必要最小限度の実力(自衛隊)の保持は許容される。ただし、集団的自衛権の行使は、この「必要最小限度」の範囲を超えるため、憲法上許されない。

2. 批判が向けられた安保関連法の改正点

安保関連法は、以下の事態において、集団的自衛権を行使し、自衛隊が武力を行使することを可能にしました。

存立危機事態:我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態。

この「存立危機事態」での武力行使容認が、従来の政府解釈である「自国への武力攻撃が発生した場合(個別的自衛権)にのみ、必要最小限度の実力を行使できる」という枠組みを大きく超えるため、「憲法9条が禁じる**『海外での武力の行使』を可能にするものだ**」と批判されました。

従来の解釈変更に対する議論

従来の政府解釈では、「集団的自衛権の行使は、憲法9条の下で許容される自衛の措置の範囲を超え、違憲である」とされていました。

しかし、安保関連法の制定にあたっては、この従来の解釈を閣議決定によって変更し、「国際情勢の変化」や「国民の生命・安全を守る必要性」を理由に、「限定的な集団的自衛権の行使は、憲法9条が許容する自衛の措置の範囲内である」との新たな解釈が示されました。

この**「解釈の変更」によって、憲法改正を経ずに集団的自衛権の行使を可能にした点に対し、「立憲主義に反する」**という強い批判が、多くの憲法学者や野党からなされました。


この論点に関する詳細な議論や、政府がなぜ解釈を変更したのかという背景について、さらに詳しくご説明することも可能です。




Q.さらに詳しく説明してください。

かしこまりました。安保関連法制における「憲法違反ではないか」という議論の核心である、**「解釈改憲」「立憲主義」**の観点から、政府側と批判側の主張をさらに詳しく解説します。


「解釈改憲」をめぐる攻防

1. 従来の政府解釈(1972年見解)

従来の政府見解(1972年の田中角栄内閣による見解が代表的)は、以下の論理でした。

  • 個別的自衛権:日本に対する武力攻撃が発生した場合に、これを排除するために必要最小限度の武力を行使することは、憲法9条が禁じる「戦力」ではないため合憲

  • 集団的自衛権:日本と密接な関係にある他国が攻撃された場合に、日本が武力を行使して他国を防衛する権利。これは、日本自身の防衛(個別的自衛権)の範囲を超え、憲法9条が許容する「必要最小限度の実力」の範囲外であるため、行使は許されない(憲法違反)。

2. 安保法制における解釈の変更(2014年閣議決定)

安倍政権は、以下の理由を挙げて従来の解釈を変更しました。

  • 理由:国際情勢の変化により、従来の解釈では国民の生命と安全を守りきれないリスクが生じている。

  • 新しい解釈:集団的自衛権の行使は、「存立危機事態」(日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある事態)に限定し、「必要最小限度」の範囲内で行うのであれば、憲法9条の下でも合憲である。

この**「解釈の変更」**こそが、最大の論争点です。

主張 政府・賛成派の立場 批判・反対派の立場
解釈変更の必要性 安全保障環境の変化に対応するため、憲法の枠組みを維持しつつ、国民の生命を守るために必要な措置。 従来の解釈は長年の憲法規範として確立していた。これを内閣の一存で変更するのは、「憲法改正」に等しい解釈改憲)。
武力行使の範囲 **「存立危機事態」**という厳格な限定を設けており、無制限の武力行使はしない。 他国への攻撃に対し、日本が武力を行使すること自体が、**「国際紛争を解決する手段としての武力行使の放棄」(憲法9条1項)**に反する。

「立憲主義」への違反の指摘

「憲法違反」という批判は、個々の条文の解釈だけでなく、**「立憲主義(Constitutionalism)」**という民主主義の根本原理に反しているという点にも向けられました。

立憲主義とは

「立憲主義」とは、国家権力を憲法によって縛り、国民の権利と自由を保障するという考え方です。

批判の要点

政府が自ら定めた憲法解釈を、国会での憲法改正の手続き(衆参両院での3分の2以上の賛成、国民投票)を経ずに、内閣の判断のみで変更したことが問題視されました。

  1. 法の支配の原則:内閣は憲法に縛られるべきであり、政府が都合の良いように憲法の意味を変えることは、**「法の支配」ではなく「人の支配」**につながる。

  2. 国民の意思の無視:憲法改正は、国民投票によって国民の意思を確認して行うべき最高法規の変更手続きです。これを回避し、内閣が重要な解釈を変更することは、国民の意思を軽視していると批判されました。

多くの憲法学者が国会で「違憲である」と証言したこともあり、この安保関連法制は、日本の安全保障体制を大きく変えるだけでなく、立憲主義のあり方についても大きな議論を巻き起こしました。


この解説で、政府側と批判側の論点がより明確になりましたでしょうか。




Q.「違憲である」かどうかについて、最高裁での判決は出ていますか?

はい、安保関連法(平和安全法制)の**「違憲性」そのものについて、最高裁判所による最終的かつ実質的な判断**は、まだ下されていません

現在、安保関連法の違憲性をめぐって全国各地で多くの訴訟(主に、精神的苦痛に対する国家賠償請求訴訟や、自衛隊の出動差止訴訟)が提起されています。

最高裁による「憲法判断の回避」の状況

全国各地の訴訟は最終的に最高裁に上告されていますが、最高裁は現在までのところ、以下の対応を続けています。

  1. 上告棄却・上告不受理の決定:最高裁は、訴訟の本質的な内容である「安保法制が憲法に違反するかどうか」という実質的な憲法判断に踏み込むことなく、上告を棄却したり、上告を受理しない(不受理)とする決定を相次いで行っています。

  2. 定型文による処理:これらの決定は、違憲性に関する具体的な理由を示すことなく、定型的な文言を用いてなされていることが多いと指摘されています。

このように、最高裁が違憲性の判断を避ける手法は、**「憲法判断回避」**と呼ばれ、司法がその役割を果たしていないのではないかという批判も、弁護士会などから上がっています。

? 下級審での判断の状況

地方裁判所(地裁)や高等裁判所(高裁)でも、多くの裁判で「憲法判断の回避」が続いていますが、一部の裁判では、憲法判断に踏み込む動きが見られました。

  • 仙台高等裁判所の判決(2023年12月):全国で展開されている訴訟の控訴審判決の中で初めて、「一定の憲法判断に踏み込んだ」と評されました。しかし、判決自体は原告の請求を棄却しており、安保法制の運用が限定的であることなどから「明確に憲法違反とまでは言えない」という趣旨の判断が示されています。

裁判で違憲性を争う難しさ

そもそも、日本の司法制度では、法律や制度そのものの違憲性を直接訴える訴訟(抽象的違憲審査)は原則として認められていません。

そのため、原告は、

  1. 安保法制の成立・運用により、**「平和的生存権」**などの憲法上の権利を侵害され、精神的苦痛を被った

  2. よって、国に対し損害賠償を請求する(国家賠償請求訴訟)

という形式をとって、その訴訟の中で、安保法制の違憲性を主張しています。しかし、この「平和的生存権」の侵害が裁判上認められるかどうかが、大きな壁となっています。

現状では、安保関連法が違憲であるか否かの最終的な司法の判断は確定していません


この動画では、安保法制違憲訴訟の全国初の憲法判断となった仙台高裁判決について報じられています。 原告「裁判所が政府の機関に成り下がった」安保法制違憲訴訟で全国初の憲法判断「運用が限定的で明確に憲法違反とまでは言えない」請求を棄却 仙台高裁





Q.どうして日本の司法制度では、法律や制度そのものの違憲性を直接訴える訴訟(抽象的違憲審査)は原則として認められていないのですか?

ご質問は、日本の司法制度の根幹に関わる重要な点です。

日本が法律の違憲性を審査する制度は、「付随的違憲審査制(ふずいてきいけんしんさせい)」と呼ばれており、ご指摘の通り「抽象的違憲審査」は原則として採用されていません。

これには、主に憲法上の根拠司法権の性質という2つの理由があります。


1. 憲法上の根拠と司法権の限定

? 憲法第81条と司法権の範囲

日本の違憲審査権の根拠は日本国憲法第81条にあります。

憲法第81条:最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

この条文は、裁判所が違憲審査権を持つことを定めていますが、憲法第76条第1項で定められた**「司法権の範囲」**という制約を受けます。

憲法第76条第1項:すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

そして、この「司法権」とは、具体的な法律上の争訟(そうしょう)」(当事者間で権利や法律関係について争いがある事件)を解決する権限であると解釈されています。

? 抽象的審査が認められない理由

法律や制度そのものの違憲性を具体的事件を離れて(抽象的に)審査することは、この「法律上の争訟を解決する」という司法権の本来の性質から逸脱すると考えられています。

  • 付随的審査制(日本):具体的な事件の判決を出すために必要となる場合に限り、その事件に適用される法律の合憲性を審査する。

  • 抽象的審査制(例:ドイツの憲法裁判所):具体的な事件がなくても、国会や内閣などの国家機関からの請求に基づき、法律の合憲性を一般的・抽象的に審査する。

日本は、アメリカの制度に近い付随的審査制を採用しているため、裁判所が自ら「この法律は違憲ではないか」と宣言するために訴訟を起こすことはできないのです。

2. 権力分立(三権分立)の観点

抽象的違憲審査を認めないのは、**国会(立法権)**が国民の代表として制定した法律に対し、**司法(裁判所)**が、具体的な被害者や事件がない段階で、あまりに積極的に介入することを避けるという、**権力分立(三権分立)**上の配慮もあります。

  • 積極的な介入への懸念:具体的な事件がない段階で法律を無効とすることは、裁判所が**「立法の優位」**を犯し、立法府の意思決定に過度に干渉することにつながる懸念があるためです。

違憲審査の現実的な問題点

上記の憲法上の理由に加え、日本の司法制度の運用上の特徴も、最高裁が違憲審査に消極的である理由として挙げられます。

  1. 通常裁判所としての役割:日本の最高裁は、憲法問題を専門に扱う**「憲法裁判所」ではなく、民事、刑事、行政などあらゆる事件の最上級審**としての役割も担っています。このため、憲法判断に特化する人的・時間的な余裕が少ないと指摘されています。

  2. 内閣法制局の存在:法律案は国会に提出される前に、内閣の法制部門である内閣法制局によって厳格な合憲性の事前チェックを受けています。この事前審査が事実上「有権解釈」として機能していることも、司法の積極的な判断を消極的にしている一因です。


日本の司法は、「具体的な事件で被害が発生している人に救済を与える」という機能に限定して違憲審査権を行使するという考え方をとっている、ということです。

この日本の司法制度の仕組みについて、さらに具体的な例を交えて解説することも可能です。いかがでしょうか?





Q.そうすると、日本では、憲法に違反する法律が作られても、その法律を無効にする手段がないということですか?

いいえ、それは違います。日本では、憲法に違反する法律が作られたとしても、その法律を無効にする手段はあります

しかし、その手段はご指摘の通り、特定の制約のもとで行われます。


? 日本における違憲立法を無効にする手段

結論から言うと、日本で法律を無効にする手段は、「付随的違憲審査制」という仕組みを通して、裁判所が担っています。

1. 具体的な裁判で「適用を拒否」することで無効化

日本では、ある法律が憲法に違反しているかどうかを審査し、無効にする権限は最高裁判所にあります(憲法第81条)。

法律が「違憲」と判断され、事実上無効となるのは、以下のプロセスを経たときです。

  • 具体的な事件が発生する:ある具体的な事件(争訟)で、当事者が「この事件に適用しようとしている法律の条文は、憲法に違反している」と主張する。

  • 裁判所が審査する:裁判所(最終的には最高裁)は、その事件を解決するために、その法律の条文を審査します。

  • 違憲判断と適用拒否:裁判所が「この法律の条文は憲法に違反している」と判断した場合、その事件に対して当該の法律の適用を拒否します

この**「適用拒否」によって、その法律は当該事件においては効力を失います**。

2. 最高裁の判例による事実上の無効化

さらに、最高裁で下された「違憲判決」は、その後のすべての裁判に強い影響を与えます。

  • 判例の拘束力:最高裁が特定の法律を違憲と判断する判例を出すと、下級裁判所(高等裁判所、地方裁判所など)も同様の事件ではその判例に従うようになり、事実上、その法律は実質的な効力を失った状態になります。

  • 国会による対応:最高裁が違憲判決を出した場合、国会(立法府)は、国民の権利を守るため、違憲とされた部分を削除したり、内容を修正したりする法改正を行うことが通常です。

このように、日本では、抽象的な形で法律そのものを抹消することはできませんが、具体的な事件を通じてその法律を事実上使用できなくすることによって、無効化する仕組みが存在します。


なぜ「抽象的審査」が必要かという議論も

ただし、安保関連法の議論のように、具体的な事件が起きるのを待たずに、国民の権利が侵されるおそれがある時点で、法律の是非を問いたいというニーズがあるため、「抽象的違憲審査制も導入すべきではないか」という議論も、常に存在しています。

日本の司法権の範囲(付随的違憲審査制)

このように、手段は限定的ですが、憲法に違反する法律が国会で作られたとしても、最終的には司法(裁判所)が国民の権利を守る最後の砦として機能する仕組みになっています。




Q.何か具体的な事件が発生してはじめて意見かどうかを審査することができるということですか?

はい、その通りです。日本の司法制度では、まさに**「具体的な事件」が発生し、それが裁判所に持ち込まれてはじめて、その事件に適用される法律の「違憲性」**を審査することができます。

この仕組みを「付随的違憲審査制」と呼びます。


「付随的違憲審査制」の核心

付随的違憲審査制の核心は、以下の点にあります。

1. 司法権の範囲(争訟性)

裁判所が持つ司法権(憲法第76条)は、**「具体的な法律上の争訟(争いのある事件)」**を解決する権限に限定されています。

  • 具体的な事件が必要:法律の違憲性を審査する行為は、あくまでこの具体的な事件を解決するための手段として「付随的に」行われます。

  • 抽象的審査の否定:そのため、「この法律は憲法に違反しているのではないか」という抽象的な疑問を抱いた国民が、事件がないのに法律そのものを訴えることはできません。

2. 「裁判規範」としての機能

違憲審査権は、裁判所が法律を無効にする権限であると同時に、憲法が**「裁判規範」**(裁判の判断基準)として機能するための仕組みでもあります。

裁判官は、事件を審理する際、まず適用しようとする法律が憲法に違反していないかをチェックします。もし違憲であれば、その法律を適用せず、憲法の規定に基づいて判決を下すことになります。

具体的な事件の例

例えば、以下のような流れで違憲審査が行われます。

違憲審査が行われる具体的な事件の例 争点となった法律・制度
公職選挙法違憲訴訟(一票の格差) 公職選挙法(選挙区の区割り規定)
事件の流れ 投票の価値に差がある選挙が行われた結果、当選した議員の行為は違法であるとして、選挙の無効を求める訴訟が提起される。
裁判所の審査 裁判所は、選挙の無効を判断するにあたり、公職選挙法の規定が「法の下の平等」(憲法第14条)に違反しないか(一票の格差が許容範囲か)を審査する。
結果 最高裁が「違憲状態」や「違憲」と判断し、国会に対し改正を促す。