JAの問題点

Q.JAの問題点は何ですか?

JA(農業協同組合)は日本の農業を支える重要な組織ですが、その多岐にわたる事業や組織体制から、いくつかの問題点が指摘されています。


主な問題点

  • 利権問題と不透明な運営

    • JA内部や関連企業において、役員や職員が自身の利益を優先する行動が見られることがあります。特に、農業資材の販売において特定の業者との癒着や高額な価格での販売が問題視されることがあります。
    • 資金の流れや会計処理の不透明さが指摘され、組合員や農業者の信頼を損ねるケースも発生しています。
  • 金融事業への依存と農業融資の少なさ

    • JAグループは、農業関連事業だけでなく、信用事業(JAバンク)や共済事業(JA共済)などの金融事業が大きな収益源となっています。特に農林中央金庫からの運用益の還元がJAの経営を支えている側面があります。
    • しかし、預金総額に比べて農業への融資が1%程度と少ないことが指摘されており、本来の農業振興という目的との乖離が問題視されることがあります。
    • 共済事業においては、職員に過酷なノルマが課され、自爆営業が行われているケースも報じられています。
  • 組織の広域化と組合員との関係希薄化

    • 経営基盤強化のためJA合併が進んでいますが、広域化により組合員との関係が希薄になる懸念があります。組合員のニーズが十分に反映されにくくなる可能性も指摘されています。
  • 農業者の減少と高齢化

    • 日本の農業従事者は年々減少し、高齢化も深刻です。これはJAの経営基盤にも影響を与え、農業者の減少はJAの活動を支える組合員の減少にもつながります。
    • 大規模経営の農家からは、JAが零細農家向けのサービスに重点を置き、大規模経営のニーズに応えきれていないという批判も聞かれます。
  • 資材価格の高騰と農産物の販路

    • 農業資材の高騰が続く中で、JAの購買事業における資材価格の高さが指摘されることがあります。
    • 農産物の販売についても、共同販売の仕組みにおいて透明性や情報開示が不十分だという意見や、大規模農家が直販や他の販路を模索する動きも見られます。

改革への取り組み

これらの問題に対し、JAグループは自己改革に取り組んでいます。具体的には、農業者の所得向上、農業生産の拡大、地域の活性化、組合員の積極的な参加と利用などを柱に、組織や事業の見直しを進めています。生産資材価格の引き下げや、担い手経営体への対応強化、直売所の拡充などもその一環です。

JAは長年日本の農業を支えてきた存在であり、その役割は大きいですが、変化する農業環境や社会情勢に合わせて、さらなる改革が求められています。




Q.さらなる具体的な改革案はありますか?

JAが抱える問題点に対して、これまでも様々な改革が議論され、一部は実行に移されています。ここでは、さらに踏み込んだ具体的な改革案について、いくつかの方向性で提示します。


1. 農業者の所得向上と生産性向上への徹底した貢献

  • 生産資材の調達コスト削減の徹底と多様化

    • 国内外からの競争原理の導入: 全農(全国農業協同組合連合会)による一括購買の仕組みはスケールメリットがある一方で、競争が働きにくい側面もあります。国内外の多様な資材メーカーとの直接取引や、民間流通ルートとの価格比較を徹底し、より安価で高品質な資材を農家が自由に選択できる仕組みを構築する。
    • ジェネリック農薬・肥料の開発促進と普及: JAグループが主導して、特許切れの農薬や肥料のジェネリック品の開発・普及を加速させ、資材コストを大幅に引き下げる。
    • 共同購入の仕組みの見直しとメリット還元: 大規模農家や集落営農組織など、購買量の多い利用者に対して、より明確な割引やリベート還元を強化する。
  • 農産物の販売力強化と多様な販路開拓

    • 市場外流通への積極的な参入支援: 農家が直接消費者や実需者(食品加工業者、外食産業など)と結びつく直販、契約販売、ECサイト販売などをJAが積極的に支援。販売手数料の透明化と低減を図る。
    • 高付加価値化とブランド化の支援: 地域ブランドの育成、GI(地理的表示)保護制度の活用、加工品開発への支援など、農産物の付加価値を高める取り組みを強化。
    • 輸出戦略の抜本的強化: 各JAが独自に、あるいは地域単位で、海外市場のニーズを捉えた品目選定、品質管理、物流体制の構築をJAグループ全体で強力にバックアップする。
  • 営農指導の高度化とデータ活用

    • 専門性の高い営農指導員の育成: 経験豊富な指導員に加え、ドローン、AI、IoTなどの先端技術を活用できるデジタルに強い営農指導員を育成し、スマート農業導入支援を強化する。
    • 農業経営の「見える化」支援: 各農家の生産データ、収益データ、コストデータなどを集約・分析し、経営改善に役立つ具体的なアドバイスを行うコンサルティング機能を強化する。
    • 新規就農者への手厚い支援: 土地の紹介、初期投資の融資、技術指導、販路確保まで、新規就農者が安定して農業を始められるようワンストップでサポートする体制を整備する。

2. 金融事業の再編と地域貢献の強化

  • 農業融資の抜本的強化とリスクマネーの供給

    • 融資審査基準の見直し: 担保に依存しない、事業性評価に基づいた融資を拡大し、農業者の事業拡大や新規投資を積極的に支援する。
    • 多様な金融商品の開発: 農業経営に特化した融資、設備投資ローン、経営改善支援ローンなど、農業者の多様なニーズに応える金融商品を開発する。
    • 地域内の資金循環の促進: JAバンクに集まった預金を、地域の農業振興や地域経済活性化のための投資に積極的に振り向ける仕組みを構築する。
  • 共済事業の適正化と顧客志向への転換

    • 過剰なノルマの廃止とインセンティブの見直し: 職員への共済販売ノルマを廃止し、組合員・利用者のニーズに合った保障提案を重視する評価制度へ移行する。
    • 説明責任の強化と情報開示の透明化: 共済商品の内容やリスクについて、より分かりやすく、丁寧に説明する体制を強化し、契約時の情報開示を徹底する。
    • 地域の福祉・医療との連携強化: 高齢化が進む地域において、共済事業で培ったノウハウやネットワークを活かし、地域の医療機関や福祉施設との連携を深め、組合員の生活支援サービスを拡充する。

3. ガバナンス改革と組織運営の透明化

  • 外部人材の登用と経営のプロ化

    • 理事会への外部専門家の登用: 経営、財務、農業生産、マーケティングなどの専門知識を持つ外部人材を理事や監事に積極的に登用し、経営の透明性と健全性を高める。
    • 若手職員の積極的な登用と育成: 組織の活性化のため、年齢や経験に関わらず、能力のある若手職員を重要な役職に登用し、リーダーシップを発揮できる機会を増やす。
  • 組合員への情報公開の徹底と意見反映の強化

    • 経営情報の開示範囲の拡大: 事業ごとの収益状況、資産運用状況、役員報酬などを、より詳細に組合員に開示する。
    • 組合員との対話機会の拡充: 総代会だけでなく、組合員向けの意見交換会や説明会を定期的に開催し、組合員の声を経営に反映させる仕組みを強化する。
    • 准組合員の意思反映の検討: 准組合員(農業者ではない組合員)の事業利用制限は当面見送られているが、今後、その事業利用や組合運営への関わり方について、より実態に即した議論を深める。
  • 事業の選択と集中、効率化

    • 不採算事業の見直し: 地域の実情に合わない、あるいは収益性の低い事業は大胆に統廃合を進め、経営資源を農業振興に資する事業に集中させる。
    • デジタル化の推進: 事務処理の効率化、組合員向けサービスのオンライン化、データ分析による経営改善など、デジタル技術を積極的に導入し、業務効率を向上させる。

これらの改革案は、JAが「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」という自己改革の基本目標をより実効性のある形で達成するための具体的な道筋となるでしょう。同時に、地域社会のニーズに柔軟に対応し、持続可能な農業と地域づくりに貢献する組織への変革が期待されます。