法律の規制対象と憲法の規制対象 |
Q.法律は誰を規制するものですか?憲法は誰を規制するものですか? 一般に、法律と憲法はそれぞれ異なる範囲で規制を行います。
簡単に言えば、法律は「国民を規制」し、憲法は「政府を規制」すると言えます。それによって、権力の乱用を防ぎ、社会全体のバランスを維持する役割を果たしています。
自民党憲法改正草案については、憲法学の観点からさまざまな議論が行われています。草案には「公益及び公の秩序を尊重して行使されなければならない」といった条件が追加されており、これが基本的人権の絶対性を弱める可能性があるとの懸念が指摘されています。また、「公益」や「公の秩序」の定義が曖昧であるため、権力の濫用を招く恐れがあるとも言われています。 さらに、憲法学の基本的な理解に反する点として、憲法が「権力を縛る鎖」であるべきところを「国民を縛る鎖」として捉えているとの批判もあります。これらの点から、憲法学の常識に完全に沿っているとは言い難い部分があるようです。
自民党憲法改正草案の作成には、多くの政治家が関与しました。例えば、中谷元が起草委員会の委員長を務め、保利耕輔や小坂憲次が顧問として参加しました。また、幹事には川口順子や中川雅治が含まれ、さらに事務局長として礒崎陽輔が活動しました。 この草案は、計29名の国会議員によって起草され、石破茂や片山さつき、佐藤正久などもメンバーとして名を連ねています。詳細な情報はこちらで確認できます。
政府を縛る憲法は、王権時代に端を発する面があるものの、それだけに限定されるものではありません。歴史的に見ると、王権の抑制を目的とした憲法のような規範が登場したのは、主に絶対王政や専制政治の下での権力濫用を防ぐためでした。例えば、イギリスの**マグナ・カルタ(1215年)**は、ジョン王の権力を制約し貴族の権利を守る目的で作成された文書で、憲法の先駆けとされています。 その後、近代の市民革命(アメリカ独立革命やフランス革命)を経て、権力の分立と国民の権利保障を目的とした憲法が広まっていきました。特に、近代憲法では、政府や統治機関を制約する枠組みを設け、権力を分散させることで市民の自由を守ることが基本的な役割となっています。 現代においても、憲法は「権力を縛る鎖」であり続けています。ただし、その役割はさらに進化し、単に政府を縛るだけでなく、国民の基本的な権利を明文化し、社会全体の秩序や公平性を保つものとして機能しています。
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