六ケ所村再処理工場の総事業費はいくらぐらいですか?
Q.六ケ所村再処理工場の総事業費はいくらぐらいですか?

六ケ所村(青森県)の使用済み核燃料再処理工場(通称「六ケ所再処理工場」)の総事業費について、最新の報道によると以下のようになっています。

以前の見積もりでは、建設費が約2.9?3.1兆円、総事業費が14.7兆円?13.9兆円程度とされていましたが、度重なる延期や安全対策費の増加により、最新では約15.6兆円が正式な数字として報じられています ふくしまミエルカ PROJECT朝日新聞International Panel on Fissile Materials


要点まとめ

項目 見積額
建設費(建屋など) 約?3.7?兆円
総事業費(運転・保守・廃止含む40年) 約?15.62?兆円

この数字は、2025年6月時点での最新見積もりに基づいており、公的機関であるNuRO(原子力バックエンド機構)が発表したものです ワールド・ニュークリア・アソシエーション+10International Panel on Fissile Materials+10TBS NEWS DIG+10。そのため、今後さらなる費用調整や延期があれば、再算定される可能性があります。


Q.費用の内訳を教えてください。

六ケ所村再処理工場に関する最新の**総事業費(約15.6兆円)**の内訳について、NuRO(使用済み燃料再処理機構)と報道資料をもとに以下のように整理できます。

六ケ所再処理工場:費用の主な内訳(2025年6月時点)

1. 再処理関連事業費

日本原燃が提案した再処理施設、返還廃棄物管理、輸送・処分、MOX加工、廃止措置などを含む費用です(単位:兆円)ウィキペディア+13nuro+13朝日新聞+13

項目 今回(最新) 従来 増加分
初期施設(既存再処理建屋等) 2.2 2.2 0
新規制基準対応設備投資 0.75 0.04 +0.70
その他設備投資(増設・更新) 1.6 1.1 +0.50
操業費(運転・保守費) 7.4 6.8 +0.6
廃止措置 1.6 1.6 0
小計 13.5 11.7 +1.8
経営効率化(コスト削減) ?0.5 0 ?0.5
合計(再処理関係) 13.0 11.7 +1.3
返還廃棄物管理・輸送・処分 0.9 0.9 ±0
再処理等事業費合計 13.9 12.6 +1.3

2. MOX燃料加工事業費(再処理後プルトニウム・ウランを燃料化)

MOX加工施設の建設・運転・廃止措置を含み、約2.3兆円(内訳:初期設備0.4兆円・更新0.3兆円・操業1.5兆円・廃止0.1兆円)nuroCnic+2JNFL+2


最新(2025年6月)概算まとめ


ポイントまとめ

  • 建設費:約3.7兆円

  • 運転/維持・保守費:再処理に7.4兆円・MOX操業に1.5兆円

  • 廃止措置:再処理で1.6兆円・MOXで0.1兆円

  • 返還廃棄物管理・処分:約0.9兆円

  • コスト抑制の効率化:?0.5兆円(経営効率化分)


? 補足と留意点

  • この内訳は日本原燃とNuROが2025年6月に公表した最新推計に基づくものです国際環境NGO FoE Japan+3International Panel on Fissile Materials+3nuro+3nuro

  • 新規制基準への対応や延期による増加(例:新安全基準への設備更新、新たな規制対応など)が主要因です。

  • 経済指標の見直し(過去10年の平均を使用)により、廃止費用など一部項目が若干見直されています。



Q.六ケ所村再処理工場の事業を廃止すれば日本の原子力事業はどうなりますか?

六ケ所村再処理工場の事業を仮に廃止した場合、日本の原子力政策・事業全体に以下のような重大な影響が生じます。


【1】核燃料サイクル政策の崩壊

? 現在の方針:

日本は「核燃料サイクル(使用済み燃料を再処理し、プルトニウムとウランを回収して再利用する方針)」を国策として採用しています。

  • 六ケ所再処理工場は、その中核施設です。

  • 廃止すれば、「再処理 → MOX燃料 → プルサーマル発電」という一連の政策が実質破綻します。


【2】使用済み核燃料の「行き場」がなくなる

問題点:

現在、全国の原発で出る使用済み燃料の保管容量は逼迫しており、再処理を前提として一時保管されています。

  • 六ケ所工場が廃止されれば、使用済み燃料の「出口」がなくなり、原発の継続運転が物理的に不可能になります。

  • 各原発の燃料プールが満杯になると、新たな燃料装荷ができず、原発停止に追い込まれる可能性。


【3】エネルギー政策・外交への打撃

核不拡散上の配慮:

日本は「核兵器を保有せず、民生用にのみプルトニウムを保有する」ことを国際的に約束しています。

  • 再処理工場を廃止しても、日本にはすでに**大量のプルトニウム(約46トン)**が存在しており、その処理方針が問われます。

  • アメリカやIAEAからの国際的圧力が強まる可能性があります(核兵器転用リスクとみなされる)。


??【4】原子力産業の収益構造が崩れる

六ケ所工場は電力会社(東電、関電など)からの「再処理負担金」で運営されています。

  • 工場を廃止すれば、これまでの**再処理積立金(数兆円)**の行き先が宙に浮きます。

  • 原子燃料サイクルの前提が崩れることで、関連企業・産業基盤が瓦解しかねません。


【5】代替政策が必要:直接処分への転換?

もし廃止すれば、使用済み燃料は再処理せずに**「直接地層処分(ワンススルー)」**が必要となります。

  • しかし、地層処分場の候補地すら未定(北海道の寿都町などで調査段階)。

  • 国民理解・地域合意・建設費(数兆円以上)・技術的課題が山積。


廃止の影響まとめ(簡易表)

分野 想定される影響
原発運転 使用済み燃料の行き場がなくなり停止の恐れ
核燃料サイクル 破綻・政策の全面見直しが必要
国際関係 核不拡散上の批判・外交的リスク上昇
経済・雇用 日本原燃や関連産業に大打撃
地層処分 即時の代替政策が必要だが困難
再処理積立金 使途不明で返金や訴訟の可能性も

結論:再処理工場の廃止は「原発全体の政策再設計」を意味する

六ケ所再処理工場を廃止すると、単なる施設停止にとどまらず、日本の原子力政策そのものの根幹が揺らぐことになります。

とはいえ、既に建設費3.7兆円・総費用15兆円を超えており、「このまま続けて良いのか?」という疑問も大きくなっています。



Q.世界で再処理政策をとっている国はありますか?

はい、再処理政策をとっている国は世界に数か国ありますが、実際に「商業規模で再処理を行っている国」はごくわずかです。以下に、再処理政策をとっている主な国とその現状をまとめます。


再処理政策をとっている主要国(2025年時点)

国名 再処理施設 状況・特徴
フランス ラ・アーグ再処理工場(Orano社) 世界最大の商業再処理施設(年間1,700トン処理可能)。実績豊富。MOX燃料の再利用も。政府支援と輸出収益が支え。
イギリス セラフィールド再処理施設(2022年閉鎖) かつては最大級だったが経済性と廃棄物問題で停止。今は再処理から撤退
日本 六ケ所再処理工場(試運転前) 政策として再処理維持中。稼働延期を繰り返し、運用開始は2025年度中を目指す。MOX燃料計画あり。
ロシア マヤーク再処理工場、RT-1など 再処理を軍事利用と商業目的で両用。プルトニウムの高速炉再利用を想定。再処理能力は維持されている。
中国 再処理パイロット施設(蘭州)、将来の大型工場を建設中 フランスOrano社と提携し大規模再処理施設の導入を計画(2030年ごろ)。核燃料サイクル構築を進める中。
インド 再処理施設保有(Trombay、Tarapurなど) 軍民両用(非NPT加盟国)。高速炉計画と連動。透明性に課題あり。
韓国 政策上は再処理禁止(米韓協定) 米国との合意により商業再処理は不可。Pyroprocessing(乾式再処理)に技術開発中。
ドイツ 過去に再処理を委託(仏・英へ) 政策転換で直接処分へ完全移行。自国内に再処理施設なし。

再処理政策の採用国は少数派です

  • 再処理を「政策として維持」しているのは、日本、フランス、ロシア、中国、インドなど。

  • ただし実際に民間・商業ベースで大規模再処理が安定運用されているのはフランスのみです。

  • 他国(特に先進国)は経済性・核拡散リスク・放射性廃棄物問題から再処理を廃止または凍結しています。


各国の再処理政策の方向性(図解)

再処理方針 主な国 特徴
? 積極維持 技術的基盤があり、政策・軍事・資源戦略と連動
技術開発中 乾式再処理など。商業再処理は禁止中
? 廃止/凍結 経済性・世論・拡散懸念から方針転換し直接処分へ

日本の特殊性

  • 日本は唯一の非核兵器国かつNPT加盟国で再処理政策を維持しています。

  • アメリカとの「日米原子力協定」に基づき、特別にプルトニウムの民生利用が許可されています。

  • この政策の維持が国際的な信頼と監視体制(IAEAなど)の対象になっています。


? まとめ

  • 再処理を国家政策として明確に推進している国は世界でも少数派です。

  • 経済性や核拡散リスクの問題から、アメリカやドイツ、カナダなどは再処理を廃止・凍結。

  • フランスとロシアが実質的な再処理技術・実績をリード

  • 日本は独自の再処理政策を堅持しており、世界的にも例外的存在です。