ピロリ菌は癌の原因になりますか?
Q.ピロリ菌は癌の原因になりますか?

はい、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ、Helicobacter pylori)は胃がんの原因の一つとされています。

詳しく説明すると:

ピロリ菌とは?

  • 胃の粘膜に住み着く細菌で、強い酸性環境でも生き残る特徴を持ちます。

  • 多くの場合、幼少期に感染し、放置すると長期間にわたり胃に炎症を起こし続けます。


ピロリ菌とがんの関係

  1. 慢性胃炎の原因

    • ピロリ菌の感染により慢性的な胃炎(慢性萎縮性胃炎)が引き起こされます。

  2. 胃粘膜の変化

    • 長期の炎症で胃粘膜が傷つき、「腸上皮化生」や「萎縮性胃炎」などの前がん病変が進行。

  3. 胃がんのリスク増加

    • 特に「胃の腺がん(非噴門部胃がん)」のリスクが高まると、WHO(世界保健機関)も明言しています。

    • ピロリ菌は「グループ1の発がん因子(最も明確な証拠がある分類)」に指定されています。


? 除菌のメリット

  • ピロリ菌を除菌すると胃がんリスクが大幅に下がることが、数多くの研究で示されています。

  • 日本では保険適用での除菌治療(抗生物質と胃酸抑制薬の併用)が可能です。


ピロリ菌感染が疑われるサイン

  • 慢性的な胃の痛み、胃もたれ

  • 胃潰瘍や十二指腸潰瘍の既往

  • 家族に胃がん患者がいる場合


チェックした方が良い人

  • 40歳以上で胃の検診を受けていない人

  • 若くても潰瘍の既往がある人

  • 胃がんの家族歴がある人



Q.ピロリ菌の感染ルートは?

ピロリ菌の感染ルートについては完全には解明されていませんが、**主に「口からの感染(経口感染)」**が有力とされています。

以下に、現在考えられている主な感染ルートを紹介します。


主な感染経路

1. 幼少期の家族内感染

  • ピロリ菌は**主に幼少期(5歳以下)**に感染すると考えられています。

  • 親(特に母親)からの口移し、食器の共有、唾液を介した接触などが原因になるとされています。

    • 例:同じ箸やスプーンで食べさせる

    • 唾液のついた指で子どもに触れる

2. 水や食べ物からの感染

  • 衛生環境が悪い地域では、井戸水などを通じてピロリ菌が広がる可能性があります。

  • 過去の日本や発展途上国では、この経路が重要だったと考えられています。

3. 人から人への感染(唾液や糞口感染)

  • 感染者の唾液や便に含まれるピロリ菌が、手や食器、環境表面などを介して他人に感染する可能性があります。

  • 歯周病のある人はピロリ菌の温床になりやすいとも言われています。


なぜ子どもの頃に感染しやすいの?

  • 胃酸の分泌が未熟で、ピロリ菌が生き残りやすい

  • 衛生管理が不十分なことが多い

  • 免疫力が未熟なため、排除しにくい


大人になってから感染するのは稀

  • 大人の胃は酸性が強く、ピロリ菌が定着しにくいため、新たに感染することは非常にまれです。


感染予防のためにできること

  • 食器や箸の共有を避ける(特に子どもと)

  • しっかりとした手洗い

  • 安全な飲み水・加熱処理された食べ物を摂取

  • 家族に感染者がいたら、自分も検査を受けることを検討



Q.除菌治療に副作用はありますか?

はい、ピロリ菌の除菌治療には副作用が起こる可能性があります。ただし、多くは軽度で一時的なものです。治療の恩恵(胃がん予防など)が大きいため、一般的にはメリットの方が上回ると考えられています。


除菌治療の概要(日本の場合)

ピロリ菌除菌治療は、7日間の内服が基本です。

一次除菌療法(保険適用)

  • 抗生物質 2種類(例:アモキシシリン+クラリスロマイシン)

  • 胃酸を抑える薬(PPI または P-CAB)


?? 主な副作用(発生率は10〜30%ほど)

症状 説明
下痢・軟便 抗生物質が腸内細菌に影響。最も多い副作用。
腹痛・胃の不快感 胃腸の反応による。食後の服用で軽減されることも。
味覚異常・口の苦味 クラリスロマイシンの影響で一時的に発生。
発疹・かゆみ アレルギー反応の一種。軽度なら様子を見ることも。
吐き気・食欲不振 抗生物質への反応。重症化はまれ。

ごくまれに起こる重い副作用(注意が必要)

  • アレルギー性の重度発疹(スティーブンス・ジョンソン症候群など)

  • 偽膜性腸炎(強い下痢・発熱・血便)

  • こうした重篤な副作用は極めてまれですが、異常があればすぐに医師に相談が必要です。


? 副作用を軽減する工夫

  • 食後に服用する(胃への刺激を減らす)

  • 整腸剤(ビオフェルミンなど)を一緒に処方されることもある

  • 途中でやめない(途中中断すると耐性菌ができ、除菌に失敗しやすくなる)


除菌成功率と再治療

  • 一次除菌成功率:約70〜90%

  • 失敗した場合、二次除菌(抗生物質の組み替え)で対応可能

  • 二次除菌も失敗することは稀で、ほとんどの人が最終的に除菌成功します


不安があれば、服用前に医師や薬剤師と副作用のリスク・対応策について相談すると安心ですよ。