日本人は医療リテラシー

Q.日本人は医療リテラシーが低いのですか?

日本人の医療リテラシーについては、一概に「低い」とは言えませんが、いくつかの課題が指摘されています。

医療リテラシーの定義と日本の現状

医療リテラシーとは、健康や医療に関する情報を理解し、適切に活用できる能力のことを指します。WHOの定義では、単なる知識だけでなく、健康維持や医療機関の利用における意思決定能力も含まれます。

日本人の医療リテラシーに関する指摘

  1. エビデンスよりも経験則を重視する傾向

    • 科学的根拠(エビデンス)に基づく医療情報よりも、口コミや経験談を重視する人が多い。

    • 「〇〇が効く」といった根拠の不明確な情報がSNSやテレビで拡散されやすい。

  2. かかりつけ医文化の未成熟

    • 日本ではフリーアクセス制度(どの医療機関にも自由に受診できる)があるため、軽症でも大病院に直接行く人が多い。

    • その結果、適切な医療機関の選択ができていないケースがある。

  3. 健康情報の理解力にばらつきがある

    • 日本の義務教育では、健康や医療に関するリテラシーを体系的に学ぶ機会が少ない。

    • 医師の説明が専門的で難しく、患者が十分に理解できていないこともある。

  4. 予防医療やセルフケアの意識が低い

    • 定期健診の受診率は高いが、生活習慣病の予防やセルフケアの意識が欧米に比べて低い。

    • ワクチン接種や禁煙、運動習慣などに対する理解が不十分な場合もある。

医療リテラシー向上のために

  • 正しい情報の発信:医療従事者やメディアが科学的根拠に基づいた情報をわかりやすく伝える。

  • 教育の強化:学校教育や企業研修などで、医療リテラシーを高める取り組みを行う。

  • かかりつけ医の活用:身近な医師との信頼関係を築き、適切な医療機関の利用を心がける。

結論

日本人の医療リテラシーは「低い」というより「課題がある」という表現が適切です。ただし、国民皆保険制度の充実や、医療へのアクセスの良さなど、世界的に見ても恵まれた環境にあることも事実です。今後は、エビデンスに基づく医療情報の活用や、予防医療への関心を高めることが重要です。




Q.海外と比較して、日本人は医師の説明が専門的で難しく十分に理解できていない割合が高いのですか?

日本人が医師の説明を十分に理解できていない割合が、海外と比較して特に高いかどうかについては、国際的な調査や比較データが限られています。ただし、いくつかの研究や傾向から、日本には以下のような課題があることが指摘されています。

1. 日本における医療コミュニケーションの特徴

(1) 医師中心の診療スタイル

  • 日本では伝統的に「医師の指示に従う」という考え方が強く、患者が積極的に質問しにくい傾向があります。

  • 海外(特に欧米)では「インフォームド・コンセント(説明と同意)」や「shared decision-making(共同意思決定)」が重視され、患者が積極的に質問・意見を述べる文化があります。

(2) 説明の専門性が高く、わかりにくい

  • 日本の医師は専門用語をそのまま使うことが多く、患者向けの平易な言葉で説明する機会が少ないと指摘されています。

  • 例えば、アメリカでは「plain language(わかりやすい言葉)」を使う指針があり、専門用語を一般的な言葉に言い換える努力がされています。

(3) 診察時間が短い

  • 日本では診察時間が平均5?10分程度と短いことが多く、十分な説明ができない場合があります。

  • 一方、アメリカやドイツなどでは15?20分程度の診察時間を確保することが一般的で、患者の質問に対応する余裕があります。


2. 海外の医療リテラシーとの比較

国際的な医療リテラシー調査の一つに、「欧州医療リテラシー調査(HLS-EU)」 があります。この調査によると、医療情報を理解し活用する能力には国ごとの差が見られました。

日本のデータと直接比較可能なものは限られますが、日本の医療リテラシーは欧米より低めという指摘もあります。

  • 2015年の調査(Tokyo University Health Literacy Survey)によると、日本人の約3割が医療情報を適切に理解・活用できていないと報告されています。

  • アメリカの「National Assessment of Adult Literacy(NAAL)」では、成人の36%が「基本的な健康情報を理解するのが難しい」と回答しています。

  • ヨーロッパ諸国(特に北欧)では、医療リテラシーのスコアが比較的高く、患者の質問や意思決定が活発です。


3. 日本の医療コミュニケーションの課題と改善策

(1) 患者が質問しづらい文化

  • 「先生に聞くのは失礼」「忙しそうで聞きにくい」という心理的ハードルがある。

  • 欧米では「セカンドオピニオン」が一般的で、患者が納得するまで複数の医師の意見を聞くのが普通。

(2) 医師の説明の平易化が進んでいない

  • 欧米では患者向けのパンフレットやウェブサイトで「専門用語なしの解説」が整備されている。

  • 日本でも一部の病院で「やさしい日本語」を使った説明が導入され始めているが、まだ広く普及していない。

(3) 医療リテラシー向上の取り組みが必要

  • 学校教育で医療リテラシーを高めるカリキュラムが必要。

  • 医師側のコミュニケーション研修の充実(わかりやすい説明をするトレーニング)。


結論

日本では医師の説明が専門的で難しく、患者が十分に理解できないケースが多いのは事実ですが、それが海外より極端に高いかどうかは一概に言えません。ただし、欧米と比較すると以下の点が課題となっています:

  1. 医師が専門用語をそのまま使うことが多い

  2. 診察時間が短く、十分な説明ができない

  3. 患者が積極的に質問しにくい文化がある

  4. 医療リテラシー向上の取り組みが少ない

これらの点を改善すれば、日本でもより分かりやすい医療コミュニケーションが実現し、患者の理解度も向上するでしょう。