「日本の公的医療保険とモラル・ハザード」

Q.「日本の公的医療保険とモラル・ハザード」という本を知っていますか?

はい、その本は存在します。

日本の公的医療保険とモラル・ハザード』は、寺井公子(てらい?きみこ)氏による単行本で、三菱経済研究所から2020年2月10日に刊行されています。A5判で約47ページと簡潔な一冊です js-is.org+13jstage.jst.go.jp+13yodobashi.com+13

本書の概要

  • 著者:寺井公子氏は、東京大学大学院で経済学博士号を取得し、慶應義塾大学経済学部の教授を務める経済学者です

  • 目次構成

    1. はじめに

    2. モラル・ハザード、逆選択、医師誘発需要

    3. モデル

    4. ファースト・ベストの医療保険

    5. セカンド・ベストの医療保険

    6. 政策への含意

    7. 結語

  • 定価:税別1,000円(税込1,100円) jbaudit.go.jp+9gov-book.or.jp+9hanmoto.com+9

内容のポイント

本書は、公的医療保険制度における「モラル・ハザード(倫理的リスク)」とそれへの対策を、経済学的手法を用いて分析したものです。医療の過剰利用や逆選択などの問題点を整理し、ファーストベスト・セカンドベストの概念を通じ、より望ましい制度設計への示唆を論じています。




Q.「ファーストベスト」と「セカンドベスト」について、具体的に説明してください。

もちろんです。「ファーストベスト」と「セカンドベスト」は、経済学でよく使われる概念で、とくに最適な資源配分や制度設計を考えるときに重要です。以下では、公的医療保険制度との関係をふまえて、具体的に説明します。


◆ ファーストベスト(First Best)とは

? 定義

**「完全な情報」や「市場の失敗が存在しない」理想的な条件下で達成される最適な状態(パレート効率的な資源配分)**のことです。

? 医療保険の文脈でいうと:

  • 保険会社(または政府)はすべての人の健康状態や医療ニーズを完全に把握している。

  • 医療提供者(医師)は患者の利益に沿って最適な医療を提供する。

  • 患者も保険の内容や自己負担の仕組みを完全に理解しており、過剰受診をしない。

  • 道徳的リスク(モラル・ハザード)も、逆選択も、医師誘発需要も起きない。

? ファーストベストの問題点:

このような「完全な理想」は現実には存在しません。医療の情報は非対称で、患者も医師も完全には合理的に行動しません。そのため、多くの場合ファーストベストは理論的な基準として使われます。


◆ セカンドベスト(Second Best)とは

? 定義

**ある理想条件(=ファーストベスト)のいずれかが満たされないときに、それを前提とした「現実的な最適解」**を探すアプローチです。

? 医療保険の文脈でいうと:

たとえば、以下のような現実的な制約を考慮に入れます:

  • モラル・ハザードが存在する(保険によって受診が過剰になる)

  • 医療提供者にインセンティブがある(例:診療報酬制度による誘発需要)

  • 健康状態に関する情報が患者しか知らない(逆選択)

  • 保険財政に制約がある

このような状況では、「完全な保険」を提供するとかえって社会全体の効率が悪くなる可能性があるため、**部分的な自己負担(コペイ)**や、給付制限などを導入して、現実的な最適状態(セカンドベスト)を目指します。


◆ 具体例での比較(医療保険)

条件 ファーストベスト セカンドベスト
情報の対称性 あり(完璧) なし(医師・患者に非対称性あり)
保険の設計 完全保険(費用を全額カバー) 一部自己負担(モラル・ハザード対策)
医師の行動 完全に患者のために行動 利益に応じて診療を誘導することも
目標 パレート最適 政策的に妥当な効率・公平のバランス


◆ この概念の意義

寺井公子氏の著書『日本の公的医療保険とモラル・ハザード』では、モラル・ハザードや逆選択などの「現実的な障害」を認めたうえで、セカンドベストの観点から医療保険の設計をどう最適化できるかを論じています。




Q.この本では、医療保険どのように設計すればいいと結論づけているのですか?

ご要望ありがとうございます。ただ、寺井公子氏の『日本の公的医療保険とモラル・ハザード』はJ?STAGEに全文PDFが公開されていません(概要のみ)ため、第6章「政策への含意」、第7章「結語」に記されている具体的な“制度設計の内容”の全文を把握するのは困難です hmv.co.jp+13jstage.jst.go.jp+13kinokuniya.co.jp+13

とはいえ、目次構造と経済学の常識から、その結論をある程度推測することは可能です。以下に整理した形でご紹介します:


本書での制度設計のポイント(推定も含む)

  1. モラル・ハザード抑制のための自己負担制度

    • 保険が完全に医療費をカバーすると過剰利用が起きやすいため、**コペイメント(定額負担や割合負担)**を導入して利用の自制効果を期待。

  2. 逆選択への対応と広いリスクプール

    • 健康リスクの高い人だけが加入する事態を防ぐため、加入の強制化やコミュニティ型リスクプールを構造的に設ける。

  3. 医師誘発需要へのインセンティブ設計

    • 医師が診療報酬システムを活用してサービスを過剰提供しがちな問題に対し、包括払い・出来高制のミックスや行動評価に基づく報酬体系を組み合わせ、誘発需要の抑制を図る。

  4. セカンドベスト条件下での最適化

    • 情報の非対称性(患者・医師の知識の偏り)、コスト制約、制度の現実的制約を踏まえ、部分的な完全保険+自己負担付きモデルを通じて最適な制度(セカンドベスト)を提案。


想定される“結論”のイメージ

  • 社会保障としての医療保険は、公平性と効率性のバランスをとるためには、「完全無料ではなく、ほどよい自己負担」を設けるべき。

  • 医療提供者への報酬制度は出来高払い一辺倒ではなく、アウトカム重視の包括払いや行動評価を併用し、供給者側のインセンティブの調整が必要。

  • 加えて、高額療養費制度など既存のセーフティネットとも整合させながら、全体としてリスク分散と過剰利用抑制の両立を図る制度構造が望ましい。


注意点

  • 上記は第4〜6章の構成や一般的経済理論、国内外の医療保険制度の知見をもとに推察した内容です。

  • 正確な設計案・政策提言の詳細を知りたい場合は、第6章〜第7章の 「政策への含意」、「結語」に収録された本文を直接ご確認されることをおすすめします(現在は絶版ですが、図書館や中古書店で入手可能)




Q.寺井公子氏は何かの委員になっていますか?

寺井公子(てらい きみこ)氏は、多方面で活躍する著名な公共経済学者で、以下のような多くの委員や専門家会議のメンバーを務めておられますasahi.com+1mbs.jp+1


主な委員歴・役職

  • 日本学術会議 連携会員(2014年?)

  • 文部科学省・大学設置分科会 専門委員(2013年?2016年)

  • 日本学術振興会 科学研究費委員会 専門委員(2014年?2016年)

  • 財務省 財政制度等審議会 臨時委員(2019年?/国家公務員共済組合分科会)

  • 内閣府 税制調査会 委員(2020年?2023年)、さらに特別委員として(2024年?)

  • 厚生労働省 社会保障審議会 臨時委員(年金数理部会)(2022年?)

  • 埼玉県 施策評価有識者会議 委員(2023年?)

  • 内閣府 沖縄振興審議会 委員(2025年?)

他にも、日本財政学会理事や常任理事NHK放送技術研究所の研修講師足立区 区民評価委員会委員、**人事院 国家公務員採用試験専門委員(財政学)**などを歴任されていますsites.google.com+1k-ris.keio.ac.jp+1


?? 活動概要

氏は、税制・社会保障制度・財政政策など公共経済に関する専門知識を求められる国や自治体の意思決定の場に、多数参加されています。特に、生命保険・年金財政だけでなく、沖縄振興高齢化に伴う制度設計評価など、幅広い政策分野でも発言力を持っています


? まとめ

寺井公子氏は、大学の研究者にとどまらず、政府系審議会・省庁・自治体の有識者会議などに幅広く参画しており、公共経済や社会保障政策の形成に深く関わっています。

ご関心ありましたら、どの委員会でどのような提言をされたかについても詳しくご共有できます。お気軽にお知らせください