市場からの国債購入額減額による日銀国債保有額の減少

Q.2024年夏から日銀は市場からの国債購入額を減らしてるが、これによって日銀の国債保有額は減りますか?

日銀が市場からの国債購入額を減らした場合、すぐに日銀の国債保有額が減るわけではありませんが、将来的に減少する可能性があります。以下に詳しく説明します。


■ 現状:購入額の減少とは?

日銀が「国債の購入額を減らす」というのは、新たに買い入れる量を減らすという意味です。つまり、

  • 今まで:毎月たとえば 6 兆円ずつ購入していた

  • 今後:それを 5 兆円、4 兆円に減らす

というように、増加ペースを鈍化させるということです。


■ 国債保有額が減る条件

日銀の国債保有額が減るには、以下の条件が必要です。

条件 内容
@ 満期償還 日銀が保有する国債が満期になり、政府が元本を返済する。日銀がその分「再投資(再購入)」しなければ保有残高は減る。
A 売却 日銀が保有する国債を市場で売却する。ただし、現時点では積極的な売却は行っていない。

■ 今回のケース:2024年夏以降

日銀は「量的引き締め(QT)」の一環として、国債購入額を徐々に減らしています。しかし、

  • 満期償還分の再投資は続けている(少なくとも段階的に)

  • 国債の市場売却も行っていない

ということから、**保有額の増加ペースが鈍る(横ばいに近づく)**が、すぐに減少に転じるわけではありません。


■ 結論(要約)

  • 日銀が国債の購入額を減らしても、保有額はすぐには減らない

  • 将来的に満期償還分の再投資を停止すれば、保有額は徐々に減っていく可能性がある

  • 現時点では、**「保有額の増加を止める段階」**に入ったと理解するのが適切です。




Q.日銀の出口戦略を説明してください。

日銀の「出口戦略」とは、長年続けてきた大規模な金融緩和(超低金利政策・量的緩和=国債大量購入など)から、正常な金融政策に戻るための道筋のことを指します。

以下に、日銀の出口戦略の全体像を分かりやすく説明します。


現在地:これまでの金融緩和とは?

日銀は2013年の黒田総裁時代から「異次元の金融緩和」として以下を実施してきました。

政策 内容
マイナス金利 銀行が日銀に預ける一部の資金に対してマイナス金利(0%以下)を適用
国債の大量購入 国債を大量に買い入れ、長期金利を0%前後に抑える(イールドカーブ・コントロール、YCC)
ETF等の買入 株式市場への影響力を高めるためETFなどリスク資産も購入

出口戦略のステップ(想定される道筋)

日銀の出口戦略は以下のような段階で進むと考えられています(欧米の事例も参考に)。

Step 1. 金利政策の正常化(実施済み)

  • ? マイナス金利の解除(2024年3月に実施済み)

  • ? YCCの終了または緩和(これも実質的に終了)

  • → これにより短期・長期金利は市場の力で少しずつ上昇


Step 2. 資産購入の縮小(今ここ)

  • 国債の購入額を減らす(保有額の増加ペースを鈍化)

  • ? 満期償還分の再投資を段階的にやめる(再投資停止)

  • ? ETFやREITなどリスク資産の新規購入を停止 or 縮小


Step 3. 資産の圧縮(本格的な出口)

  • 保有資産(国債・ETFなど)の売却 or 自然償還による減少

  • 市場に混乱を与えないよう「静かに保有を減らす」姿勢が必要

  • 政府債務とのバランスも考慮が必要(国債市場が不安定になるリスク)


出口戦略の難しさ・課題

課題 内容
市場の不安定化リスク 金利上昇や国債売却で市場に混乱が起こる可能性
政府債務の圧力 日銀が国債を売ると長期金利が上がり、国の借金返済負担が増える
景気への悪影響 引き締めすぎるとデフレに逆戻りする懸念

まとめ:日銀の出口戦略とは?

日銀の出口戦略とは、

大規模な金融緩和(超低金利・資産購入)から段階的に撤退し、金利・資産の「正常な水準」へ戻すこと

です。

現在は **「利上げ+国債購入額の減少」**という段階にあり、次は **「保有資産の圧縮」**へと進むと見られています。




Q.「異次元」の金融緩和からの正常化までは何年を要しますか?

「異次元の金融緩和」からの**完全な正常化(出口)**までに要する年数は、明確に決まっていませんが、おおよそ

数年(3〜10年程度)を要する可能性が高い

と見られています。以下、その理由を段階的に解説します。


ステップ別に見る「所要年数」の見通し

Step 1. 金利政策の正常化(すでに開始・一部完了)

  • ? マイナス金利の解除(2024年3月)

  • ? YCC(イールドカーブ・コントロール)の終了(事実上2024年3月)

  • ? 所要期間:約1年?2年

→ この段階は すでに達成済み。今は次のステップへ進行中。


Step 2. 資産購入の縮小・再投資の停止

  • 国債購入額の段階的減額(2024年夏から開始)

  • ? 満期償還分の「再投資」を徐々に減らす

  • ? ETF・REIT等リスク資産の購入終了(ただし売却はしていない)

これは最もデリケートな段階の一つ。市場への影響を見極めつつ慎重に進める必要があるため、2〜5年かかる可能性。


Step 3. 保有資産の圧縮(いわゆる「出口」)

  • 売却または満期償還で国債残高を減らす

  • ETF・REITなどリスク資産を市場に放出するか保有し続けるか判断

このフェーズは最も時間がかかる。理由は:

理由 説明
国債市場が不安定化しやすい 売却すれば金利が急上昇する恐れ
政府の財政圧力 長期金利が上がると国の利払い負担が増える
過去に例がない ETFを大量に保有している中央銀行は日銀だけ(世界初の試み)

→ このため、5?10年かけて慎重に行うと予想されます。


まとめ:全体で何年かかるか?

ステップ 内容 期間
Step 1 金利の正常化 〜2024年(完了)
Step 2 国債購入の縮小/再投資の減額 2024〜2027年?
Step 3 資産の圧縮(本格的な出口) 2026〜2035年?

? 完全な「正常化」には、トータルで5〜10年程度かかる可能性が高いです。


補足:欧米との比較

  • **FRB(米国)やECB(欧州中銀)**は2022年以降にQT(資産圧縮)を実施しており、開始から約2〜3年である程度の圧縮が進んでいます。

  • ただし、日銀は他国と違い、ETFやREITも大量保有しており、出口の難易度が高いのが特徴です。