高度経済成長時代に学生運動が噴出した理由

Q.なぜ、先進各国で高度経済成長時代に学生運動が噴出したのですか?

高度経済成長時代に先進各国で学生運動が噴出した背景には、以下のような要因が複合的に絡み合っています。

1. 経済成長と社会の変化

高度経済成長により、多くの国で中産階級が拡大し、高等教育を受ける学生の数が急増しました。経済的余裕が生まれると、学生たちは単なる生存や就職の問題だけでなく、社会の在り方や政治に対して積極的に関心を持つようになります。

2. 冷戦下のイデオロギー対立

東西冷戦の時代、資本主義・民主主義陣営と社会主義・共産主義陣営の対立が続いていました。多くの学生たちは、米ソの軍拡競争や戦争(例:ベトナム戦争)に反発し、反戦・反体制運動を展開しました。特に西側諸国では、政府が冷戦の名のもとに軍事力を強化し、戦争に関与することに対する批判が強まりました。

3. 公民権運動・人権運動の影響

アメリカでは、1960年代の公民権運動が広がり、人種差別撤廃や平等を求める運動が高まりました。これが他の社会運動(フェミニズム、環境保護、労働運動など)にも影響を与え、学生たちが積極的に社会改革を訴える流れを生みました。

4. 大学の大衆化と教育の矛盾

大学進学率の上昇により、かつてはエリート層に限られていた大学が大衆化しました。しかし、大学の教育体制はその変化に追いつかず、画一的な教育や管理体制に対する不満が高まりました。特にフランス(1968年の五月革命)や日本(全共闘運動)では、大学の自治や教育の自由を求める運動が激化しました。

5. メディアと情報の発達

テレビや新聞などのメディアが発達し、学生たちは世界の出来事をリアルタイムで知ることができるようになりました。例えば、ベトナム戦争の悲惨な映像が広く報道されることで、反戦意識が一層高まりました。

6. 世代間の価値観の対立

戦争を経験した親世代と、戦後の豊かさの中で育った学生世代との間に価値観の違いが生じました。親世代が戦後復興と経済成長を重視する一方で、学生たちは自由や平等、環境問題といった新たな価値観を求めるようになり、対立が激化しました。

まとめ

高度経済成長がもたらした社会の変化、冷戦下の政治的対立、公民権運動の影響、大学の大衆化、メディアの発達、世代間の価値観の違いなどが絡み合い、学生運動が先進各国で同時多発的に発生しました。1968年のフランス・五月革命やアメリカのバークレー反戦運動、日本の全共闘運動などは、その象徴的な例といえます。