経済ゼロ成長で豊かな社会を作れますか?

Q.経済ゼロ成長で豊かな社会を作れますか?.

とても良い問いですね。
結論から言うと 経済成長(GDP成長率)がゼロであっても、豊かな社会を作ることは可能 です。ただし「豊かさ」をどう定義するかによって条件が大きく変わります。


1. 「ゼロ成長」とは何か

  • 経済学で言う成長は、通常「GDP(国内総生産)の拡大」を指します。

  • ゼロ成長=GDPが拡大しない状態。ただしGDPが一定でも、分配や効率、環境負荷などの面で状況は大きく変わります。


2. ゼロ成長でも豊かさが維持・拡大できる理由

  1. 分配の改善
    経済規模が大きくならなくても、富の偏在を是正すれば、より多くの人が生活の質を高められます。
    → ベーシックインカムや累進課税、社会保障の強化など。

  2. 生産性向上と労働時間の短縮
    成長がなくても効率化により、同じGDPを少ない労働時間で生み出せる。
    → ワークライフバランス改善、余暇や地域活動の増加。

  3. 非市場的な豊かさ
    GDPに含まれない「健康」「人間関係」「教育」「文化」「自然環境」などを重視すれば、ゼロ成長下でも幸福度は高められる。
    → ブータンのGNH(国民総幸福量)やOECDのBetter Life Indexなどの考え方。

  4. 環境持続性
    無限の成長を追わないことで、資源消費や二酸化炭素排出を抑え、持続可能な社会を実現できる。


3. 難しい点・課題

  • 資本主義システムとの摩擦
    多くの企業は「成長」を前提に投資・雇用を拡大するため、ゼロ成長が長期化すると倒産や失業が増えるリスク。

  • 金融システム
    利子や株式市場は「拡大」を前提に設計されているため、成長なき経済では構造改革が不可欠。

  • 政治的困難
    分配改革やエコ転換には利害調整が伴い、合意形成が難しい。


4. 実現への方向性(デグロースやポスト成長の議論)

  • 経済成長至上主義からの脱却(GDP以外の指標で国の豊かさを測る)

  • 再生可能エネルギーと循環型経済への移行

  • 雇用制度や福祉制度を「成長依存」から切り離す

  • 余暇・地域・文化的活動を重視するライフスタイルの普及


? まとめると:
ゼロ成長でも「分配」「効率」「非経済的な価値」を重視すれば、むしろ環境や生活の質の面でより豊かな社会を築けます。ただし、現在の金融・企業システムをそのままにしてゼロ成長を続けると不安定化するため、「ポスト成長型の制度設計」が不可欠です。



Q.実際にゼロ成長や縮小経済を模索している国・都市の事例を紹介してください。

良いですね。では「ゼロ成長」や「縮小経済(デグロース)」を意識的に模索している事例をいくつか紹介します。まだ実験的な取り組みが多いですが、国・都市・地域レベルでの実践が世界各地に広がりつつあります。


国レベルの事例

1. ブータン(Bhutan)

  • 特徴: 「GDP」ではなく「国民総幸福量(GNH)」を政策の中心に据える。

  • 取り組み: 教育・文化・環境・地域共同体の強化に重点。経済成長より国民の幸福度や自然との調和を重視。

  • 課題: 若者の失業、都市化による格差拡大。GNHとグローバル経済との折り合いが難しい。

2. ニュージーランド

  • 特徴: 2019年に「ウェルビーイング予算」を導入。経済成長ではなく国民の幸福やメンタルヘルス、環境保全を指標に予算を編成。

  • 取り組み: 精神保健対策、子どもの貧困削減、先住民支援などに重点投資。

  • 課題: GDP減速と社会福祉支出の持続可能性とのバランス。


都市・地域レベルの事例

1. バルセロナ(スペイン)

  • 特徴: 「デグロース都市」として知られる。市民参加型で社会的・環境的に持続可能な都市政策を模索。

  • 取り組み:

    • エネルギーを公共化(Barcelona Energy)

    • 自転車・公共交通を重視

    • 「時間政策(Time policies)」で生活リズムを改善(労働時間短縮・柔軟化)

  • 課題: グローバル観光都市としての収益依存から脱却しにくい。

2. アムステルダム(オランダ)

  • 特徴: 「ドーナツ経済学」を都市経済計画に導入した世界初の都市。

  • 取り組み:

    • 経済活動を「地球環境の限界内」と「人々の基本的欲求の充足」のバランスで評価。

    • 循環型経済(リユース、リサイクル)の拡大。

  • 課題: 実際の都市経済は依然としてグローバル成長に依存。

3. フライブルク(ドイツ)

  • 特徴: 「エコシティ」のモデルとして知られる。

  • 取り組み:

    • 再生可能エネルギー(特に太陽光)への積極的投資

    • 自動車依存を減らし、路面電車・自転車を主軸にした都市設計

    • 市民協同組合によるエネルギー生産・分配

  • 課題: 成功が住宅価格高騰を招き、格差拡大の懸念。


コミュニティ・ローカル実験

  • トランジション・タウン運動(イギリス発)
    → 地域通貨や地産地消のエネルギー・食糧システムを作る草の根の取り組み。

  • 日本の事例

    • 長野県飯田市:再生可能エネルギーの地域主導型導入。

    • 北海道ニセコ町:町民主体のまちづくりで持続可能性を重視。


ポイント

  • どの事例も 「経済成長を完全に否定」するわけではなく、GDP依存を減らし、幸福や持続可能性に軸足を移す ことを重視。

  • 実際には「ゼロ成長」を目標に掲げるよりも、「成長なき豊かさ(post-growth)」を実験しているケースが多いです。