法律の規制対象と憲法の規制対象

Q.法律は誰を規制するものですか?憲法は誰を規制するものですか?

法律憲法は、それぞれ異なる対象を規制します。

  • 法律は、基本的に**国民全体や法人(企業など)**を規制するものです。

    • 例えば、刑法は犯罪を防ぐために個人を規制し、会社法は企業の活動を規制します。

    • また、法律は国家機関(政府や役所など)にも適用される場合がありますが、主に社会全体の秩序を維持するために国民に対して義務や権利を定めます。

  • 憲法は、主に国家権力を規制するものです。

    • 憲法は国家の最高法規として、政府や国会、裁判所といった公的機関が権力を濫用しないように制限を加え、国民の権利や自由を守る役割を持っています。

    • 例えば、日本国憲法では「基本的人権の尊重」や「三権分立」などを定め、国がこれらの原則に反する行為をしないように制約を課しています。

つまり、法律は国民を規制するもの憲法は国家権力を規制するものと言えます。



Q.自民党憲法草案は憲法学の常識に沿っていますか?

自民党憲法改正草案については、憲法学者の間で多くの議論があり、その内容が「憲法学の常識」に沿っているかどうかは非常に意見が分かれています。特に、憲法の根本的な役割に関わる部分で、草案が従来の憲法理論から逸脱していると指摘されることが多いです。以下に主な論点を挙げてみます。

1. 憲法の本質に対する考え方の違い

  • 現行憲法(日本国憲法): 国家権力を制限し、国民の権利・自由を保障する「立憲主義」に基づいています。これは、国家権力を抑制するための枠組みとして憲法が存在する、という憲法学の基本的な考え方です。

  • 自民党草案: 国家の役割や国民の義務を強調しており、権力制限よりも「国家の在り方」を明示しようとしています。これは「国家が国民を規律する」方向性に近づくため、立憲主義に反するとの批判があります。


?? 2. 「国防」「緊急事態条項」の追加

  • 自民党草案には**「国防軍の創設」や、内閣に強大な権限を与える「緊急事態条項」**が含まれています。

  • 憲法学の視点からは、これらの規定が権力集中を招き、三権分立や法の支配が損なわれる可能性があると指摘されます。特に緊急事態条項は、過去の独裁政権が権力を掌握する手段として利用してきた歴史があり、慎重な検討が必要だと考えられています。


3. 「公益および公の秩序」の優先

  • 自民党草案では、人権保障の規定に「公益および公の秩序に反しない限り」という条件が付けられています。

  • 現行憲法では、基本的人権は最大限尊重され、制約が必要な場合でも厳格な審査が求められますが、草案のような表現は国家が恣意的に人権を制限できる余地を生むため、憲法学の常識から逸脱していると批判されています。


結論:沿っているか?

自民党憲法草案は、立憲主義や権力分立といった憲法学の根本原則に対して挑戦的な内容を含んでいるため、一般的な憲法学の常識に沿っているとは言いがたい部分があります。
一方で、自民党側は「時代に即した憲法のあり方を提示している」と主張しています。この点について、どの価値観を優先するかによって意見が分かれるのは自然なことです。




Q.自民党憲法草案の作成に関わった政治家は誰ですか?

自民党の2012年憲法改正草案の作成には、多くの党所属議員が関与しました。主な関係者を以下にまとめます。?

憲法改正推進本部

起草委員会

  • 委員長:?中谷元?satlaws.web.fc2.com

  • 顧問:?保利耕輔、小坂憲次?自民党+2satlaws.web.fc2.com+2日本共産党+2

  • 幹事:?川口順子、中川雅治、西田昌司?satlaws.web.fc2.com

  • 委員:?井上信治、石破茂、木村太郎、近藤三津枝、柴山昌彦、田村憲久、棚橋泰文、中川秀直、野田毅、平沢勝栄、古屋圭司、有村治子、礒崎陽輔、衛藤晟一、大家敏志、片山さつき、佐藤正久、中曽根弘文、藤川政人、古川俊治、丸山和也、山谷えり子、若林健太?satlaws.web.fc2.com

これらのメンバーが中心となり、憲法改正草案の作成に携わりました。?特に、起草委員会の委員長である中谷元氏や、事務局長の礒崎陽輔氏が重要な役割を果たしたとされています。?日本共産党+1



Q.政府を縛る憲法は、王権時代のものですか?

いいえ、政府を縛る憲法は「王権時代のもの」ではありません。むしろ、それは近代に生まれた考え方であり、「立憲主義」という重要な原則に基づいています。

1. 立憲主義とは?

  • 立憲主義とは、国家権力を憲法によって制限し、国民の権利と自由を守る仕組みです。

  • 国家が無制限に権力を行使すると、国民の自由や権利が侵害される可能性があるため、憲法を通じて政府の権力をコントロールする仕組みが作られました。

  • これは「憲法は政府を縛るもの」という考え方に直結しています。


2. 王権時代との違い

  • 王権時代(絶対王政など)では、国王が絶対的な権力を持ち、法律や政策を自由に決めることができました。国民に権利保障はほとんどなく、王の権力は無制限でした。

  • しかし、17?18世紀のヨーロッパで起こった市民革命(イギリスの名誉革命、アメリカ独立戦争、フランス革命など)を経て、**「権力は国民に由来し、国家権力は制限されるべきだ」**という思想が広まりました。

  • その結果、王権を制限し、国民の自由や権利を守るための憲法が生まれたのです。たとえば、**イギリスの「権利章典(1689年)」や、アメリカ合衆国憲法(1787年)**がその典型です。


?? 3. 日本の場合

  • 日本でも、**日本国憲法(1947年施行)**は立憲主義を採用しています。

  • この憲法は、国家権力を制限し、**「国民の権利と自由を守るためのルール」**として機能しています。

  • 以前の**大日本帝国憲法(1889年施行)**は、国民に「臣民の権利」を与える一方で、天皇が統治権を持つ構造だったため、立憲主義が完全に確立されていたとは言えません。


まとめ:

  • 「政府を縛る憲法」は王権時代のものではなく、むしろ王権を制限し、国民の自由を守るために生まれたものです。

  • 立憲主義は近代国家の原則であり、憲法は政府の暴走を防ぐブレーキの役割を果たしています。

もしさらに深掘りしたい点や、具体的な憲法条文について知りたいことがあれば教えてくださいね!?