防衛費をGDPの3.2%まで増額した場合、国家財政はどうなる?

Q.日本が防衛費をGDPの3.2%まで増額した場合、国家財政はどうなりますか?

日本が防衛費をGDPの3.2%まで増額した場合、国家財政には以下のような深刻かつ複雑な影響が考えられます。


前提条件

  • 現在の日本のGDP:約 600 兆円(2025年時点の想定)

  • 防衛費3.2%:600兆円 × 3.2% = 約19.2兆円

  • 現在の防衛費:約6.8兆円(GDPの約1.1%)

→ 増額分:約12.4兆円の追加支出


国家財政への影響

1. 歳出全体への圧力

  • 日本の一般会計歳出:約110兆円

  • 防衛費を19.2兆円にすると、歳出の約17%を占めることになる

  • 結果:

    • 他の支出(社会保障、教育、公共事業など)を圧迫

    • 予算の再配分か増税が必要


2. 財政赤字・国債残高の増大

  • 現在でも日本は歳入<歳出で、毎年30〜40兆円規模の赤字国債を発行

  • 防衛費増額を国債で賄う場合、財政赤字はさらに拡大

  • → 将来世代の負担増大、国債市場の信認低下のリスク


3. 増税の可能性

増税なしで防衛費を3.2%に増やすのは非現実的。そのため:

  • 消費税1%の税収:約2.5兆円

    • → 防衛費を12.4兆円増やすには、消費税5%前後の引き上げが必要

  • 他の選択肢:所得税・法人税の引き上げや新税(防衛税)の導入


4. 政治的・社会的反発

  • 福祉や医療への不安が強い中で、軍事費拡大に対する国民の支持は限定的

  • 特に高齢者層・リベラル層・自治体などからの反対が強まる可能性

  • → 政治的コストが高く、現実には段階的増額が限界


経済への影響(長期)

  • 短期的には軍需産業の活性化で景気刺激の可能性

  • しかし、他分野の投資が減れば経済全体の成長率が低下するリスクも

  • 経済効率の観点では、防衛費は直接的な生産性向上にはつながらない


参考:他国との比較

防衛費(GDP比) コメント
米国 約3.5% 軍事大国。世界展開。
韓国 約2.7% 北朝鮮との緊張下で高水準
NATO基準 2% 多くの加盟国は未達成
日本(現在) 約1.1% 平和憲法の影響で低水準

→ 日本の3.2%は「準軍事国家」水準で、地政学的メッセージとしても大きな意味を持つ

? 結論

日本が防衛費をGDP比3.2%に引き上げれば、12兆円以上の追加財源が必要であり、

  • 大幅な増税

  • 社会保障などの大削減

  • 国債発行の増加(将来の財政悪化)

のいずれか(あるいは複合)を避けられません。
現実には「中長期的・段階的な増額」が政治的にも財政的にも現実的な道と言えます。




Q.大幅な増税のシナリオの財政試算をしてください。

以下は、日本が防衛費をGDP比3.2%(約19.2兆円)に引き上げ、12.4兆円の追加財源を大幅な増税で全て賄うシナリオに基づく財政試算結果です。


増税シナリオ(税目ごとに比例配分)

税目 現在の税収(兆円) 増税額(兆円) 新税収(兆円) 税収増加率(%)
消費税 22.0 4.02 26.02 +18.3%
所得税 20.0 3.66 23.66 +18.3%
法人税 13.0 2.38 15.38 +18.3%
たばこ税 1.0 0.18 1.18 +18.3%
酒税 1.3 0.24 1.54 +18.3%
相続税 2.5 0.46 2.96 +18.3%
その他 8.0 1.46 9.46 +18.3%

補足ポイント

  • 各税目を均等な率(+18.3%)で増税すれば、12.4兆円を補えるというシナリオです。

  • 例えば:

    • 消費税10% → 約11.8%

    • 所得税・法人税の税率も約18%引き上げ

  • 一部の間接税(たばこ・酒税など)は税率よりも価格影響が大きく、増税余地が限られます。


? 結論

このような「全税目一律18%増税」は技術的には可能ですが、政治的・経済的な実行性は極めて低いと考えられます。特に消費税や所得税の増税には国民の強い反発が予想されます。